“白金フリー”の複合材料電極 芝浦工大、燃料電池低コスト化に弾み
モーターで動く自動車や家庭の電源や熱源としていっそうの普及が期待される燃料電池。そのキーポイントとなっているのが電極素材だ。酸素と水素の酸化還元反応を利用して電気を得る仕組みだが、酸素を還元する電極(正極)には白金を用いるのが一般的だ。レアメタルである白金は高価なことから“白金フリー”素材の実用化が求められている。
こうした中、芝浦工業大工学部材料工学科の石崎貴裕准教授の研究チームが、カーボンナノファイバー(CNF)と窒素含有カーボン(NCNP)という2種類の炭素系素材を元にした新たな炭素系複合材料を開発した。常温常圧で作製でき、白金触媒に迫る性能を示していることから、今後の燃料電池の低コスト化と高性能化への弾みとなりそうだ。
「燃料電池の電極には、性能面から白金が付いた炭素を使っている。白金を何らか別の物質に置き換えられないか、というのは白金を使う素材分野では大きな課題だ」と石崎准教授は指摘する。さらに、白金含有電極と同等以上の性能が出る電極が安価に作製できれば、燃料電池の価格も下がり、クリーンエネルギーの普及にも拍車がかかると考えられている。
今回、石崎准教授らが作製した炭素系素材は、窒素を含むベンゼン骨格の有機溶媒中にカーボンナノファイバーを分散させた状態でプラズマ(グロー放電)を発生させて合成した。溶液中でグロー放電を起こす「ソリューションプラズマ」は名古屋大の研究チームが開発した技術で、反応の制御がしやすく、気体中でのプラズマに比べて液中の方が分子密度が高い分、反応速度が高まり、多様な物質作りが期待できるという。
今回の放電時間は20分間で、終了時の溶液温度は40度程度。できた複合材料(NCNP-CNFコンポジット材料)は、カーボンナノファイバーの周囲に窒素含有カーボンがまとわりついたような形状だった。
複合材料の酸化還元反応に関する性能試験を実施したところ、比較素材の市販品の白金触媒(20%Pt/C)と比べ、触媒能(電圧)はやや劣ったが、触媒活性(電流値)は同レベルだった。
さらに、「電極には化学反応が起きる場所(サイト)があるが、反応する時間が長くなると反応サイトは減ってしまい、発生する電流が減り、電気を作れなくなる」(石崎准教授)が、電流を12時間流し続けた耐久性試験では白金触媒よりも劣化性能が優れ、燃料電池で使われるメタノールに対しても耐久性が高いことが分かったという。
今回の研究成果は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CRESTから支援を受けている。石崎准教授は「今回の複合材料は素材としての能力は白金を使った素材と近いものがあった。今後は、実際の電池に組み込み、電極としての性能評価を行いたい。
また、環境に優しく低コストの製作方法を模索する中で、将来的には金属を使わず、炭素系素材のみの電極材料を作製し、低炭素社会づくりに貢献できれば」と話している。(日野稚子)
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