元受付嬢社長みずから営業 強みは「クライアントの顔ぶれ」と話す真意

 
橋本真里子さん

 【元受付嬢CEOの視線】 こんにちは。ディライテッドCEOの橋本真里子です。第4回では、プログラミングの知見が全くなかった私が、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をどのように作ったかをお話しました。

 自己紹介が長引いてしまいましたが、締めくくりとして今回は、仕事において、さらにはRECEPTIONISTの成長のために、私が大切にしていることをお話します。社長を務める私自身がこれほど営業活動に身を入れる理由は…。

クライアントは豪華な顔ぶれ

 RECEPTIONISTの強みは、なんといってもクライアントの顔ぶれです。例えば、フリマアプリを運営するメルカリ(本社・東京都)や、2017年8月にマザーズに上場した「ユーチューバー」のマネジメントなどを手掛けるUUUM(本社・東京都)など、有名IT企業にご利用いただいています。

 受付システムとして信用を得るためには、プライバシーマークを取得したりシステムの脆弱性診断を受けたりすることももちろん大事です。ですが、これだけのクライアントに使っていただいていることは「弊社サービスが信用に足る」ということなんだと、この上ない自信につながっています。

 当然ですが、有名企業にサービスを導入してもらえるようになるまでには試行錯誤がありました。RECEPTIONISTを正式リリースする前に、いくつかの企業にテスト版の利用をお願いしました。

 「どのような企業に参加してもらうか」

 私たちはあえてITサービスに詳しく、フィードバックが厳しい企業を選びました。RECEPTIONISTの成長角度を決める重要な段階-。良い点も悪い点も、的確に評価してもらえなければ意味がありません。

 「システム操作が面倒」「アップロードの動作が重い」「フリーズする」など手厳しい意見も頂きました。ある機能はIT機器に慣れていない人でも簡単に操作できるように、一から刷新することにしました。幸い、弊社社員は受付システムだけに専念できるため、システム改修のスピードの速さは好評。システムはブラッシュアップされ、その企業も導入を決めてくださいました。

社長みずから営業

 昨年起業したばかりの弊社は、13名の少数精鋭で運営しています。部署ははっきり分かれておらず、「一人数役」をこなすのが当たり前。私の場合は、サービス開発にはもちろん関わっていますが、一番時間を割いているのは営業活動です。そこに取材などの広報活動が加わることもありますし、社内のバックオフィスの仕事も抱えています。受付嬢として働いているときは「受付業務」だけに専念できたので、「兼務」で働くのは想像以上に大変です。

 でも、業務が多岐に渡ることでメリットもあります。例えば商談で「サービスの強みは?」「他社と何が違う?」と聞かれたときに、会社全体が見えているから多角的に答えることができます。お客様に響く言葉のバリエーションをどれだけ持っているかは、商談の行方を左右します。一人数役をこなしていることで、私はこの営業力を身に付けられています。

 ちなみに…私はサービスのリリース当初からずっと営業をしています。その理由は、お客様こそ最大のヒントを与えてくれ、サービスを成長させてくれると考えているから。クライアントの声を受け止め、プロダクトに反映させるかどうかを自分たちのポリシーと照らし合わせ検討する。この繰り返しがサービスを磨いていくのです。

 第1回から5回まで長くなりましたが、自己紹介代わりに私の起業ストーリーをお話しました。

 いよいよ次回からは、受付嬢時代に見聞きした“受付と企業の裏側”を紹介していきます。ご期待ください!

【プロフィル】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社 代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。