「正義とは、ミサイルをぶっ放して相手をやっつけることなのか。俺はそうじゃないと思ったのね」。戦争では人間魚雷の特攻隊員だった弟も亡くした。正義とは何か。敗戦をきっかけに考え、その答えが「アンパンマン」のユニークなキャラクターに結実した。
長い下積みを経て花開いた苦労人でもあった。28年に漫画家として独立。作詞した「手のひらを太陽に」(いずみたく作曲)が大ヒットしたが、本業の漫画では売れない時代が続いた。48年に絵本に初登場した「あんぱんまん」(当時はひらがな)は児童にとって内容が難しすぎると、当初は評論家に酷評された。
しかし、幼稚園では幼児たちが奪い合って読み、次第に評判が高まった。テレビアニメ化され、大ヒットしたのは63年。やなせさんが69歳のときだった。