「博多の火災は人ごとではない。経営に苦しむ多くの診療所が不十分な防火態勢のままなのではないか」。男性の診療所でも、設置に数百万~数千万円がかかるスプリンクラーを取り付ける余裕はなかった。煙をセンサーで感知する最新式の防火扉を導入することも困難で、手動式の防火扉は閉めたままにしている。
有床診療所の経営難の背景には、診療報酬の問題がある。入院患者の診療報酬は大規模病院に比べて格段に低く設定されている。大病院の方が施設が充実しており、スタッフも多いため質の高い医療が提供できるという理由からだが、診療所の入院患者の診療報酬は、大病院の半分程度になることが多いという。
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が昨年度、全国の診療所を対象に行ったアンケートでは、29.5%が「赤字を抱えている」と回答した。
江口成美主席研究員は「長期入院やケアの必要度の高い患者を抱える診療所ほど、厳しい経営を強いられている」と指摘。「博多の火災を受けてスプリンクラーの設置などが義務づけられれば、ますます苦しくなる診療所も出てくるのでは」と懸念している。