バンクーバー五輪で浅田選手と(塩浦孝明撮影)【拡大】
真央、恋をしなさい
〈2010年のバンクーバー五輪に向け、パートナーを組んだ浅田真央選手とタラソワさん。お茶の間では2人の師弟関係が大きな話題となった。タラソワさんは当時、浅田選手にこんなアドバイスを送っていた。「真央、恋をしなさい」〉
誰かのことを真剣に思い続けるのが恋というもの。恋は何らかの変化をもたらし、インスピレーションを与えてくれる。自分を鼓舞してくれる。力がみなぎってくる。恋はこの世に存在する物事の中で、最も素晴らしいことなのよ。
〈タラソワさんはいつでも浅田選手を励まし、大会で高得点を獲得すれば人前でも抱きしめた〉
私はいつも真央と波長を合わせていた。だから、試合前には言葉は必要ない。目を見つめて、手を握ってあげる。時々、とても短い言葉をかけてあげる。たった一言ね。私がリンクで通訳を介することはごく少なかった。言葉をかけたい時には、私が日本語を覚えたわ。真央は何を言いたいかを感じ取り、理解してくれていた。
〈夢中で取り組んだという3年前のバンクーバー五輪。浅田選手は銀メダルだった〉
ショートプログラムで1回、フリーで2回のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させた。女子が跳べる技術じゃない。真央の練習ぶりはまったく驚くべきもので、ミスは少なく、五輪でも十分に3回跳ぶ準備ができていた。これは前人未到の記録だし、これからも長年、破られることはないでしょう。
フリーの前日、私は真央には休息が必要だと思っていた。でも、私は日本人関係者の希望もあって、練習を中止することができなかった。結局、真央は疲れからフリーの途中で力尽き、後半でミスをしてしまった。十分に勝つチャンスはあったと思う。五輪の後、私はコーチの座を退いた。前日に、練習を止められなかった自分にも責任があったから。