北海道函館市が3日、電源開発(Jパワー)が開発中の大間原発(青森県)の建設差し止めなどを求め提訴した。大間原発は全ての燃料に、使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた「混合酸化物(MOX)燃料」を使う国内初のフルMOX発電が特徴で、国策で進めてきた核燃料サイクルの中核を担う。国策に対する自治体からの異例の提訴に、「司法の場での判断になじむ問題なのか」との議論もある。
大間原発は、今秋にも新規制基準に基づく安全審査を原子力規制委員会へ申請する見通しで、すでに新規制基準に基づく安全対策が取り入れられている。津波で電源を喪失した東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、沿岸部には高さ3メートルの防潮堤を整備。陸地の高さと合わせ15メートルの津波に耐えられるようにした。
敷地周辺には、太平洋に恵山(えさん)岬東方沖断層、津軽海峡に根岸西方断層など11断層があり、耐震設計上考慮する活断層として、基準地震動(想定される最大の揺れ)の策定を進めている。
大間原発は、MOX燃料を軽水炉で使うプルサーマル計画の中心で、原子炉の建設費用の一部には国費も投入され、MOX燃料だけで発電できる国内初の発電所となる。
函館市は立地自治体ではないが、津軽海峡を挟んで原発から30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に位置するため、防災計画の策定が必要な周辺自治体として、再稼働などへ一定の影響力を及ぼす立場にある。
似た事例では、四国電力伊方原発(愛媛県)と瀬戸内海で隔てられた山口県上関町があるが、四電は同県と安全協定を締結し、立地自治体と同等の説明を果たしている。だが、電源開発は「協定の締結交渉は、原子炉の試運転時に燃料を搬入する直前の段階で行うのが通例」として、函館市や北海道との協定締結には至っていない。
函館市の工藤寿樹市長(64)は3日、提訴後の記者会見で「乱暴なやり方ではなく、(住民に)理解を求め積み上げていくべき。原発に反対する国会議員も多い中、国策といわれるのは全く承服できない」と述べた。
だが、自治体の提訴には異論もある。国学院大学の川合敏樹准教授(行政法)は「三権分立の観点から、司法は行政の裁量に踏み込まないのが慣例。今回は、事故時の財産や人命について審理されるが、結果として大間原発が建設凍結になれば、エネルギー政策という国策に影響が生じる可能性があり、司法の場になじまない提訴だ」と指摘する。(原子力取材班)