昨年7月の新規制基準施行とともに始まった原発の安全審査は、九州電力川内原発1、2号機の「合格第1号」を出すまでに1年以上もかかった。審査書案提示後も審査は終わりではなく、いくつかのハードルが待ち構える。
川内は新基準施行直後に審査申請した先頭集団6原発の一つで、当初から「合格第1号」の有力候補とみられていた。6原発は東京電力福島第1原発と構造が違い、安全対策の面で猶予期間もある。
地震想定について、規制委と見解がぶつかる原発が相次ぐ中、九電は規制委の指摘にすぐさま順応し、いち早く地震想定を修正した点が、他社から抜き出た理由だ。
審査書案で評価したのは、施設の設計や安全対策の方針を示した「原子炉設置変更許可申請書」。その申請書は当初約1800ページだったが、2度の補正を経て、最終的に5倍の約8700ページに膨らんだ。
原子力規制庁の市村知也・安全規制管理官は「申請時からしっかりと事業者が準備していれば、時間はかからなかった」と話す。当初の「半年」という見通しから延びたのは、事業者の準備不足が大きな要因だ。
規制委の審査は設置変更許可で終わりではない。その後、対策工事の設計内容を記した「工事計画認可」と、運転管理体制を確認する「保安規定変更認可」の審査が待ち受ける。事業者と対立するような課題は少ないとみられるが、工事計画の申請書は1万ページ近くになるなど、量が多いため時間が必要になる。