「発明の日シンポジウム」(主催・JIPII)で知財人材育成について論議する高林龍教授(左端)と古城春実弁護士(右から2人目)=4月13日、東京都港区の発明会館ホール【拡大】
事業戦略上の知財の重要性が大企業を中心に再認識され、知財の担当役員や部門は、オープン&クローズ(O&C)戦略はじめ高度な知財戦略の活用やリーダー養成を注視している。だが、発明推進協会(JIPII)研修チームの市島亜由子主事は「(O&C戦略の実践が必要な)今こそ、基本に返り“知財ist”(チザイスト)の育成をおろそかにすべきではない」と主張する。
知財istとは、市島氏が、43年の実績がある同協会の「知的財産権研修(本科コース)」を今春、「知財ist研修」へと刷新する際に発案した造語だ。法務と実務の素養を備え、知財の発想ができる人材を指す。近年、知財部門の再編が進み、かつて業務として実施されていた研修が自己啓発に任され、担当の役員や管理職は十分な素養を身につけないまま現場の対応に追われる傾向がある。特に実務の前段にある法務の素養習得は重要だ。
元判事で知財法の権威である早稲田大学法学部・大学院法務研究科の高林龍教授は「発明は発生から利用、消滅まで全て法律が関係する。知財というと実務に直結したテクニックを連想しがちだが、まずは法律的な考え方を学ぶことが重要」と説く。キルビー特許訴訟で知られる桜坂法律事務所の古城春実弁護士は実務者の立場から「(知財の)紛争処理では、民法の契約、民事訴訟法などの(知財法以外の)法律知識をも総合的に活用できてこそ、初めて実務に役立てられる」と指摘する。
問題はこのような知財istとしての素養を形成するには時間がかかることだ。JIPII研修チームの大重勝課長補佐は「知財ist研修は延べ約40日間。受講者の利便性を考えて単発受講も可能にしてあるが研修期間の長さと実施方法は課題となっている」と吐露する。