タイで開かれた不法移民に対する特別会議で発言するミャンマー政府代表。ミャンマーはロヒンギャという民族名も認めていない=5月29日、バンコク(AP)【拡大】
そうなると、現ミャンマー政府がいうとおり「不法移民集団がそのまま居座った」にすぎないのだろうか。歴史はそこまで単純ではない。ラカイン州には15世紀から18世紀までアラカン王国という独自の王国が栄え、そこには仏教徒のほかに多くのムスリム住民も平和的に共存していた史実がある。19世紀に入って英領化されると、ベンガル方面から大量の移民が流入し、さらに第二次世界大戦後には前述の大量移民が重なった。このように3重の層を有するこの地域のムスリムたちのうち、誰がどのように混ざってロヒンギャ・アイデンティティーを持つに至ったのか、まだ誰にもその真相は見えていない。