青森県六ケ所村の日本原燃のウラン濃縮工場(同社提供)【拡大】
6フッ化ウランは誤って空気に触れると、空気中の水分と化合しフッ化水素を発生する。これは劇物であり、大量に体内に取り込めば死に至るが、日本原燃は事故発生後8時間まで空気中の濃度が1ppmにとどまる対策を施している。半導体工場などでは法令で3ppmまで許容されていることを踏まえての措置だ。
ところが、規制委によるフッ化水素の安全基準の策定は遅々として進んでいない。本来なら、規制委傘下の核燃料安全専門審査会で議論すべきところだが、田中俊一委員長は燃安審に諮問すらしていない。結局、事務方の原子力規制庁が「海外事例を参考に検討する」としたまま打ち捨てられている。
しかし、早期に375トンSWUのウラン濃縮工場が着工しなければ、技術基盤である中小企業は立ち枯れてしまう。すでに震災から4年がたち、資金繰りに窮する企業も現れており、日本原燃が一部債務保証してはいるが、長くは続かない。ウランという機微物質を扱う手前、わが国原子力のフロントエンドを中小企業が支えていることは明らかにされてこなかった。下手に知られれば、技術者は北朝鮮の拉致対象にもなりかねないからだ。
「中小企業の連鎖倒産など世間は何の関心も払わないだろうが、日本のウラン濃縮技術は二度と復元できなくなる」。電力業界の焦りは深い…。
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【プロフィル】山崎康志
やまざき・やすし 日本工業新聞、外資系通信社記者を経て2001年独立。記者時代からエネルギー産業、IT産業、郵政事業、産業政策などを取材。著書に「電力・ガス業界大研究」(産学社)、構成に仙谷由人著「エネルギー・原子力大転換」(講談社)。1959年東京生まれ。