【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(29) (3/3ページ)

2015.9.18 05:00

エーヤーワディ管区のピャーボンから援助物資を運んできた僧侶。彼らの援助活動が目立つのも今回の洪水支援の特徴だ(筆者撮影)

エーヤーワディ管区のピャーボンから援助物資を運んできた僧侶。彼らの援助活動が目立つのも今回の洪水支援の特徴だ(筆者撮影)【拡大】

 ◆漁村も大きな被害

 ここに待避している村人に洪水時の様子をインタビューしてみることにした。主に話を聞いたのは、パヤーゴウンという、フライン川沿いの漁村から逃げてきた村人たちである。同村は総世帯数115戸ほどの漁村であり、そのうち漁業用の手漕ぎ舟を所有する世帯は50、残りの65世帯はこれらの舟所有者に雇われるか、彼らが捕獲した魚を売りさばく仕事に従事している。舟の所有を農地保有に置き換えると、農地保有世帯が村の半分弱というミャンマーの農村の状況とよく似ている。

 彼らはここに避難してきて2週間が経つと言っていた。2、3年に1度は洪水があるので慣れてはいるが、今回は増水の速度と量が尋常でなく、村にある舟だけでは間に合わず、民間や軍のエンジン付きボートで避難してきた。溺死する者はいないが、洪水で巣を追われたマムシやコブラなどの毒蛇に噛まれて死ぬ者は必ずいるとのことである。その数は洪水による死亡者の中に入っているのだろうか。

 パゴダに避難している限りは、食料も飲料も心配することはないが、問題は帰村後である。洪水が来ると魚があちこちに散らばってしまい、漁獲量は激減するという。収入を確保しながら生活の再建をしなければならないという、農村と同じ問題を漁村も抱えているのである。

 パゴダには飲料会社、食品会社、俳優、NGOなどから大量の物資が届いているが、何をどれだけどこの村に持っていくかといったロジスティクスに問題があるように思われた。また洪水後の生活支援にこれらの団体がどれだけコミットできるかも不透明である。だがナルギスの時と比べて、彼らが自由に迅速に動けるようになったことも確かである。これも民主化の恩恵のひとつかもしれない。

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