検察側は、原田被告は事故機を点検した16年11月時点で、停止したエレベーターを固定するブレーキ部品に異常が起きていたのに、適切な対策を怠ったと指摘。しかし、判決では「異常摩耗が発生、進行したと認める科学的な根拠はない」として退けた。
その上で、エス社が事故機を最終点検した事故の9日前には異常が発生していたと認定。「人身事故が発生する恐れがあることを予見でき、適切な保守管理体制を構築すべき義務があったのに怠った」と結論づけた。
判決によると、18年6月3日に港区のマンションで発生。市川さんが自宅のある12階で降りようとしたところ、エレベーターのドアが開いたまま上昇し、かごの床と外枠に挟まれ死亡した。事故はブレーキ部品が摩耗し、ブレーキが利かなくなり起きた。
シンドラーのエレベーター事故
平成18年6月3日、東京都港区の高層マンションで、都立高2年の市川大輔さんが自宅のある12階で降りようとしたところ、エレベーターのドアが開いたまま上昇しかごの床と外枠に挟まれ死亡した。東京地検は21年7月にシンドラーエレベータの元東京支社保守部長ら5人を在宅起訴。元部長は公判中に病死した。遺族は製造元のシンドラー社などに損害賠償を求めて提訴し、東京地裁で現在も係争中。消費者安全調査員会(消費者事故調)でも調査している。