大津地裁=9日午後3時51分、大津市(恵守乾撮影)【拡大】
これ以外にも、裁判所側の説明の放棄は随所に見られる。地裁は「(規制委に)代わって判断すべきであると考えるものでもない」としながらも、規制委の新基準の合理性について疑問を投げかけた。
例えば新基準は、電力会社に多様で大幅な過酷事故対策を求めている。具体的には、複数の空冷式非常用発電装置や、電源車の設置などだ。ところが、地裁は新基準が求めるこれらの備えについて「このような備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたといってよいか、躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない」と指摘した。
新基準は福島の事故を教訓に、国際的な基準を参考にして、広く国民の意見を反映した上で策定された。その根底には「安全に終わりはない」という安全神話との決別がある。
そのような策定過程を無視して、「躊躇」という感想めいた言葉で片付けることが合理的といえるだろうか。仮処分とはいえ、裁判所の判断には緻密な論理と精密な論拠が要求される。
(天野健作、緒方優子)