司馬氏は、想いと行動で「誰でも偉大なリーダーになれる」可能性、そして、付け加えるならば、仮に時代に埋もれても、事績や名前は後世の「司馬遼太郎」が掘り起こしてくれる(かもしれない?)可能性を、私たちに残してくれた。
最後に、大出世作となった約4年にわたる新聞連載小説に関するエッセー「『竜馬がゆく』がうまれるまで」からの一節を引用したい。
「一人の剣客をかくのではない。一人の青年をかくのだ、と決意した。それも、私どもの周囲にでもいる平凡な青年が、次第に成長して、しかもその成長を読者とともに楽しみつつ、ついに日本史を2度にわたって、たった一人で動かした愛すべき男をかくのだと決心した。(中略)竜馬のような一見、凡庸な子供はどの家庭にもいる。読者が、これは自分の弟だ、とか、自分の子供だ、という共感で読んでくれる時代小説を書きたい。それが成功すれば、時代小説の伝統に一つの新しいものを加えることができるだろう、と思った」
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【プロフィル】朝比奈一郎
あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO 東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。中央大学客員教授。42歳。