風水害は気象予報で予測ができ、市民も行政も前準備が可能な災害だが、地震は突然に襲ってくるので直後の瞬発的な応急対応が必要となる。地震への防災文化がそもそもない、備えも無防備だった熊本であった。そこを襲った大地震は前例がないメカニズムで発生して、気象庁も地震学者も今後の見通しを示せない想定外の地震という。5年前の東日本大震災以降、また「想定外」が起きているのである。
筆者は東日本大震災後に「備災」という言葉を全国の講演会などで伝えている。「防災」「減災」ではなく、災いは日本中どこでも起こるのであれば災いに備える「備災」を徹底的にリアルに実行する以外にない。以前このコラムでも書いたが「備災!三題噺(ばなし)=水・食料・トイレの備え」は、国民一人一人の義務といっても過言ではない。われわれはいま、想定ができない天地動乱の日本列島で生きていることを肝に銘じてほしい。
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【プロフィル】渡辺実
わたなべ・みのる 工学院大工卒。都市防災研究所を経て1989年まちづくり計画研究所設立、代表取締役所長。NPO法人日本災害情報サポートネットワーク顧問。技術士・防災士。65歳。東京都出身。