
タイ王国陸軍のティーラチャイ司令官(前列左)と次期司令官と目されるピシット参謀総長(同右)=タイ王国陸軍提供【拡大】
民間から寄付金名目で募った建設資金の一部が鋳造会社を経由して陸軍に渡ったと指摘され、当初は政権へのダメージが懸念された。だが、明確な証拠もないことから、軍政が力でふさぎ込み、以後は話題に上ることがほとんどなかった。ところが、陸軍司令官後継人事の時期が差し迫ってきた最近になって、にわかに政権や軍内部からこの問題を蒸し返す声が上がるようになり、新憲法案をめぐる国民投票の行方とともにピリピリしたムードに包まれている。
タイ王国陸軍では2000年を迎えるころまで首都防衛を担う第1師団出身者が最大派閥「テーワン派」を形成し、にらみをきかせてきた。新たに台頭してきたのが、第2歩兵師団出身者を中心とした「東方のトラ派」で、現軍政を側面から支えるプラウィット副首相兼国防相がその祖とされている。以降、タクシン元首相をクーデターで追放したソンティ司令官を除いて同派出身者が歴代司令官を独占している。
年功序列意識が日本以上に強いタイで、目下のところ東方のトラ派に属するピシット参謀総長が10月に司令官に昇格する人事が順当とされる。だが、軍政が継続し権力が集中すればするほど、陸軍内には反発の声も広がりを見せ始めている。中心人物として、ウドムデート前司令官とポストを争って敗れたパイブーン・クムチャーヤー法務大臣(元陸軍司令官補)や、ピシット参謀総長の後年次の現司令官補チャルーム・シッティサート陸軍大将らの名が挙がっている。