
「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる仕組みを解明した大隅良典・東工大栄誉教授=7月、横浜市の東工大すずかけ台キャンパス【拡大】
生活習慣病との関係も次々と明らかになってきた。順天堂大のチームは26年、2型糖尿病の発症抑制にオートファジーが必要だとする論文を発表した。原因となる細胞内の異常タンパク質は、通常は毒性を示さないが、オートファジーの機能が低下すると毒性が表れ糖尿病を悪化させていた。
東京医科歯科大のチームは27年、高血圧の一因である血管収縮にもオートファジーが関わっていることを明らかにした。血管の収縮に関わる物質は、通常はオートファジーで分解されているが、異常が生じて分解されなくなると収縮が始まるという。
一方、大阪大のチームはオートファジーが抑制されると脂肪肝が悪化することを見いだした。高脂肪の食事をマウスに与えると、肝臓内でオートファジーを抑制するタンパク質「ルビコン」が増加。細胞内の脂肪が分解されず蓄積が進み症状が悪化する。ルビコンの働きを阻害する薬を開発すれば、効果的な治療につながりそうだ。
関心が高まっているのががんとの関係だ。オートファジーはがん細胞の増殖を助けてしまうことが以前から指摘されている。抗がん剤を投与すると、がん細胞は急激な栄養不足に襲われるが、内部でオートファジーが起こり、不要なタンパク質などを食べて生き延びてしまうのだ。
大隅氏に師事した大阪大の吉森保特別教授らは25年、細胞内にオートファジーを促進する物質と抑制する物質があり、これらのバランスが崩れると、がんなどの発症につながることを突き止めた。
こうした国内の研究成果は、いずれもマウスなどを使ったものだが、米国ではオートファジー阻害剤でがんを治療する臨床試験が既に数十例行われており、実用化の研究は米国が先行しているのが実態だ。