■
人類は、ゲノム編集によって新たな生物進化の創造主になったのだ。
クリスパー・キャス9は、DNAの塩基配列を切る酵素(キャス9)を、切りたい位置に誘導するRNAとセットにした技術。精度の高さだけでなく、安価で操作が容易であることも特徴だ。医学から生態学まで、生物が関わるあらゆる分野で、応用研究がビッグ・バンのように拡大、加速する。遺伝子組み換え技術が発達したのは1970年代。ヒトのインスリンを大腸菌に作らせることができるようになった一方で、大豆などの組み換え作物も出現した。
第1世代のゲノム編集技術「ZFN(ジンク・フィンガー・ヌクレアーゼ)」が開発されたのは、90年代のことだった。
2010年ごろ、第2世代のゲノム編集技術「TALEN(ターレン)」が出現。第3世代のクリスパー・キャス9の論文が発表されたのは、それから間もない2012年だった。
第1、第2世代の技術習得には熟練を要したが、性能が格段に向上したクリスパー・キャス9は、基礎的な遺伝子工学の知識があれば扱えるということだ。
■
すでに日本でも応用研究が進んでいる。肉量の多いマダイの開発を目指す取り組みもその一例だ。魚類や哺乳類が持つミオスタチンという遺伝子には筋肉の過剰を抑制する機能があるのだが、受精卵にゲノム編集を施すと筋肉の発達した可食部の多いマダイに育つのだ。