歳月の隔たりが互いの想いを熟成する 早野龍五さんと福島のつながり (3/3ページ)

 2011年4月24日、たまたま早野さんが店の前を歩いていたら店長に呼び止められ、「早野さんにビールをご馳走したいというお客さんがいます」と、一枚のコースターを渡された。

 《早野先生へ

 先生のツイートのおかげで、パニックを起こさず、東京で日常生活を送ることができました。ありがとうございます。応援しています。ファン有志より》

 しかし早野さんは、2011年4月24日以前はもとより、その後もこの「ファン有志」に会ったことはなかった。

 この3月1日、写真展のオープニングパーティで早野さんが、このエピソードを参加者の前で披露した直後、2人の女性が会場に現れた。「コースターに書いたのは私たちです」と名乗り、早野さんは初めて「ファン有志」と出会うことになる。

 ぼくも、そのシーンに立ち会う幸運に恵まれた。

 「ファン有志」も早野さんもお店の常連だったが、この6年間、一度も会うことはなかった。

 何でもすぐ会えばよいというものでもない。ある歳月の隔たりがお互いの想いを熟成し、出会うべき時の出会いをより深いものにする。その妙は、淡々とした日常によってこそ可能なのかもしれない。

 尚、3月15日、早野さんの最終講義が行われる。ライブ中継での聴講も可能だ。(安西洋之)

【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。

                

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