タイ新憲法下で選挙の行方混沌 選管の公平さに疑問、強まる不信 (2/3ページ)

2017.6.9 05:00

無効となった2014年総選挙の投票の様子。首都圏ではほぼ正常に実施されたが、反タクシン派の多い南部では妨害行為が相次いだ=2014年2月、バンコク
無効となった2014年総選挙の投票の様子。首都圏ではほぼ正常に実施されたが、反タクシン派の多い南部では妨害行為が相次いだ=2014年2月、バンコク【拡大】

 中央選管は強い権限をもつにもかかわらず、総選挙の妨害者を放置して選挙の実施を先送してばかりいた。タイの憲法では下院解散から60日以内に投票が行われ、投票日から30日以内に国会が招集されなければならない。これができなければ憲法裁判所が選挙を無効とし、政権の責任を追及する厳しい判断を示すことは過去の例から明らかだが、中央選管は動かなかった。

 政権に反対する勢力が選挙の実施を引き延ばして政権打倒を目指すことはままある。だが、それを「阿吽(あうん)の呼吸」で中央選管が実質的に支えていたとしたらどうだろう。

 中央選管で選挙担当だったソムチャイ委員は混乱を理由に何度も同じ問題を蒸し返しながら選挙を引き延ばし、政権や内外の世論の求めにも応じようとはしなかった。その結果、14年3月下旬になって憲法裁判所が2月実施の総選挙の無効を宣言。無政府状態の混乱は頂点に達し、5月22日に軍の介入となった。

 ◆司法クーデター

 タイの選管もかつては日本や欧米諸国と同様の選挙事務をつかさどる行政委員会の一つにすぎなかった。ところが、1990年代初頭に相次いだ汚職や軍事介入への反省から三権を超えた「監視機関」を設置する必要性が高まり、国の統治から独立した憲法裁判所や中央選管などの「独立機関」が設置されることになった。

 腐敗や権力の監視-。これが、設置当初に与えられた独立機関の役割だった。“強い選管”の設置は、タイの民主化の必要十分条件とされた。

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