タイ新憲法下で選挙の行方混沌 選管の公平さに疑問、強まる不信 (3/3ページ)

2017.6.9 05:00

無効となった2014年総選挙の投票の様子。首都圏ではほぼ正常に実施されたが、反タクシン派の多い南部では妨害行為が相次いだ=2014年2月、バンコク
無効となった2014年総選挙の投票の様子。首都圏ではほぼ正常に実施されたが、反タクシン派の多い南部では妨害行為が相次いだ=2014年2月、バンコク【拡大】

 その権限は絶大だ。独自の予算とスタッフを抱え、選挙規則を自らの判断で制定できるほか、参政権の剥奪や政党交付金の助成、政党の解党を発議する権限さえも持つ。定員は5人。任期は7年で、辞任しなければその地位を追われることはない。現委員は裁判官3人、大学教授1人、元国会議員1人という構成で、任期は20年12月までだ。国民に民主主義教育を施す権限と責務も選管にあるとされている。

 ところが、既得権益層の打破を掲げたタクシン元首相の登場を機に、民主政治を否定する立場へと軸足を変えたのが中央選管をはじめとした独立機関だった。以後、強権的な機関はタクシン政治の終焉(しゅうえん)を唯一の目的として選挙で選ばれた政権を次々と交代に追い込んでいった。その動きは「司法クーデター」といつしか呼ばれるようになった。これがタイの現代政治だ。

 4月に施行された新憲法でも中央選管や憲法裁判所などの独立機関は温存が決まった。前回の混乱を踏まえ、選挙実施令の公布権限が選管にあることも明記された。だが、張本人の選挙管理委員の顔ぶれは何ら変わらず、引き続き5人が任に当たることになっている。選挙担当のソムチャイ委員は当時の取材に対し、「大切なことは、法律通りに選挙を実施することではなく、良い選挙結果を導くことだ」と繰り返し発言したことでも知られる。

 また、ピサの斜塔になぞらえて「大切な仕事の前には傾く必要がある」と自身のフェイスブックに書き込んだこともある。法律学者や非政府組織の中には「ソムチャイ氏をはじめとした現選管では選挙の公正さが担保されない」として委員の入れ替えを求める意見もあるが、軍政下において実現への期待は薄い。タイの民主化は政治不信を抱えたまま、いまなお混沌(こんとん)の中にある。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)

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