【視点】気候変動への「適応策」好事例 注目集める治水システム「田んぼダム」 (2/3ページ)

 田んぼダムは、新潟県村上市が発祥の地だ。低平地を抱える市内の神林地区では、大雨時に上流側の水田に水をため、ゆっくり放出するという試行的な調整が行われた歴史がある。約60年前のことだ。

 近年、雨の降り方が激しくなってきたこともあり、地区での取り組みは2002年から、より本格的なものに発展した。これが現代の田んぼダムの始まりだ。

 新潟県内の田んぼダムの面積は、普及初期の05年には2000ヘクタール弱だったのが、年々増えて15年の時点で1万1100ヘクタール、15市町村での実施となっている。見附市の導入率が目覚ましい。

 田んぼダムの有効性も実証されている。300年に1度の雨量とされた11年7月末の新潟・福島豪雨でのことだ。

 新潟市内の白根地区は、信濃川と中ノ口川に囲まれていて低地が多いが、この豪雨に先だって同地区では、田んぼダムが整備されていた。

 白根地区では、田んぼダムの効果で167万トンもの雨水が水田に一時貯留され、被害を一定範囲に押さえ込んだことが、新潟大学農学部の吉川夏樹准教授(水環境工学)の検証結果として報告されている。

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 20年からは地球温暖化対策の国際的な枠組みとして「パリ協定」が、現行の京都議定書に取って代わる。その運用ルールを話し合う国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が6日から12日間の日程で、ドイツのボンで始まった。

 パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く抑えることを目標にしているが、既に日本でも気候変動による脅威が増しつつあるのが現実だ。自然の生態系だけでなく、国民の生命や農業などにも悪影響が兆している。