終末期がん患者どう支えるか-医学生と宗教者が「死」を考える 10年以上続く滋賀医科大の名物講義「医の倫理合同講義」 (2/3ページ)

「医の倫理合同講義」で事例を基に議論を深める医学生と宗教者たち。右は講師の長倉伯博住職=11月13日、滋賀医科大(小野木康雄撮影)
「医の倫理合同講義」で事例を基に議論を深める医学生と宗教者たち。右は講師の長倉伯博住職=11月13日、滋賀医科大(小野木康雄撮影)【拡大】

  • 「医の倫理合同講義」で講師を務めた浄土真宗本願寺派の僧侶、長倉伯博さん=11月13日、滋賀医科大(小野木康雄撮影)

講師は僧侶

 滋賀医科大では、医学科の3、4年生に生命倫理などを教える必修科目「医の倫理」を設けている。合同講義は4年生が対象。臨床実習に出る直前に医師としての態度を学ぶ意味があるという。

 講師を務めたのは浄土真宗本願寺派の善福寺住職、長倉伯博さん(64)=鹿児島市。緩和ケア病棟で自分が接した患者を基にこの事例を作った。各班の意見発表後、長倉さんが実際にどう対応したかを明かした。

 それによると、長倉さんが、死について「これから一緒に考えていきましょうね」と語りかけると、男性はやや顔色が良くなった。そして、喪失感を埋めるため、病院で医師らを前に「がん患者の気持ち」と題して講演してもらった。「少しは役に立てたかな」。男性はそう言い残し、10日後に亡くなった。

 長倉さんは、キリスト教のホスピス医から「お坊さんはなぜ死んでからしか患者に関わらないのか」と言われたことを契機に、活動を始めた。宗教者のケアに理解のある医師や看護師らと作った連携組織は今年、設立20年を迎えた。

 長倉さんは「医療の目的は病気を治すことよりも、人生を深く味わう機会を患者に作ることに置くべきではないか。そう考えないと、人の死に直面したとき、医療には敗北しか残らない」と強調した。