【生かせ!知財ビジネス】特許情報機構 AI研究センターを新設

新設された「知財AI研究センター」のプレートを掲げて決意も新たな小林明センター長(左)と特許情報研究所の横井巨人・調査研究部長
新設された「知財AI研究センター」のプレートを掲げて決意も新たな小林明センター長(左)と特許情報研究所の横井巨人・調査研究部長【拡大】

 日本特許情報機構(Japio、東京都江東区)は1日、「知財AI研究センター」を新設。特許庁の審査や企業の知財調査で知財情報を扱う際に人工知能(AI)を活用するための研究・開発を開始した。

 Japioは、特許公報などの産業財産権情報をコンピューター技術を活用して迅速に社会へ提供し、経済の発展に貢献してきた日本を代表する総合特許情報サービス機関だ。初代センター長に就任した小林明専務理事は「今後はAIをいかに活用するかだ。1年ほど前から既設の特許情報研究所で着手していた。新センター設立を機に活動を加速化させていきたい」と話した。

 新センターは専門分野を「特許情報」「商標」「機械翻訳」に分けた3種類のAIチームを置き、総勢20人体制で運営する。特許情報AIチームは「特許文献を対象とした先行技術調査にかかる検索や評価・分析」、商標AIチームは「商標(文字・図形)の検索や解析」、機械翻訳AIチームは「(特許文献などの)機械翻訳のさらなる高品質化」を目標に、AIの有効活用方法を確立する。成果は同機構のサービスとして提供していく。

 既に成果が出始めている。世界各国の言語で書かれた特許文献を迅速かつ正確に翻訳する能力は重要だ。昨年11月、台北で開かれた「アジア翻訳ワークショップ」(WAT)で独自のコーパス(対訳データ)を用いたニューラル機械翻訳エンジンが1位を獲得、国際的に高い評価を得た。このほか特許検索では既にIBMと研究を進めている。また、自然言語処理だけではなく図形解析分野の研究にも今まさに取り組もうとしている。従来難しかった、類似商標などブランド調査用のツールとしての実用化を目指すものだ。

 世界では今、新興国の成長により知財情報が激増中で特許出願だけでも異なる言語で書かれた年間300万件以上に上るビッグデータを処理、翻訳、分析する機能が求められつつある。加えて、金融情報や市場情報と統合するなど知財情報活用の高度化が模索されている。知財業界は第4次産業革命の時代を迎えている。

 世界の知財業界が注視するAI分野の実用化にいち早く乗り出したJapio。知財AI研究センターの今後の活動が注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)