社会・その他

言い古されているが解決されない問題 なぜ日本人FWはシュートを打たないのか (4/4ページ)

 例えばスペイン代表FWジエゴ・コスタは、ユース年代までろくにサッカーを教わっていない。週末に友人と地元の試合に出る程度。特定のチームに所属していない。当然、全国的には無名の存在だったが、地元では知る人ぞ知る存在だった。不敵な面構えで、相手をはね飛ばすような馬力があり、呼び込んだボールをたたき込む、というシンプルなテクニックに恵まれていた。

 17歳になって、ようやく所属することになったチームがトーナメントに出場したときだった。たまたま、世界的なエージェント、ジョルジュ・メンデスが別の選手のスカウティングに来ていた。ジエゴ・コスタはこの試合で乱闘騒ぎを起こし、早々に退場処分となって、国内で1年間の出場停止処分を受ける。しかし、メンデスに一目でその非凡さを見込まれ、そこからプロの世界に入ることになった。

 日本のトップFWがみな部活出身の理由

 結局のところ、資質を見極められる人物がいるかいないか--。そこに日本サッカーのストライカー論の焦点はあるかもしれない。ストライカーの性質を見極められたら、なぜシュートを打たないのか、というもどかしさの塊は溶けていくのではないか。

 「ストライカーは育てるのではない。生まれるのだ」

 これが欧州、南米のサッカー界の定説である。スペイン語では「Instinto Goleador」(ゴールゲッターの天性)という表現をする。それは生まれながらの才能。どう鍛えるか、というのはもちろん大事だが、まずはその資質を見極められるか。なにをどう教えても、シュートを打てない選手は打てない。打てる選手は、他の仕事ができなくても、打てるのだ。

 その点、現場に戦術オタクのような指導者は必要ない。発育を促す。そういう環境から必然的にストライカーは育っている。

 その証(あかし)は、日本で現在もトップランクのFWの大半が、ハード面でクラブユースよりはるかに劣る高体連出身という点にあるだろう。岡崎慎司(レスター)、大迫勇也(ケルン)、浅野拓磨(シュツットガルト)、小林悠、大久保嘉人(川崎フロンターレ)、興梠慎三(浦和レッズ)、金崎夢生(鹿島アントラーズ)、川又堅碁(ジュビロ磐田)、豊田陽平(蔚山現代)というストライカーがずらりと並ぶ。20歳前後の若い選手を見ても、小川航基(ジュビロ磐田)、田川亨(サガン鳥栖)、安藤瑞希(セレッソ大阪)などは高体連育ちだ。

 彼らは誰かに教えられたのではない。「Instinto Goleador」という素養があった。もし、戦術に縛られていたら--。天性は失われてしまったかもしれない。

 小宮良之(こみや・よしゆき)

 スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して冬季五輪、W杯などを現地取材後、06年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評がある。人物ルポ中心に著書は21冊。主著に『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』シリーズ三部作(集英社)『エル・クラシコ』(河出書房)『おれは最後に笑う』『ラ・リーガ劇場』(東邦出版)。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』などで特集企画、出演。今年3月には小説『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)を上梓する。

 (スポーツライター 小宮 良之 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)

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