【生かせ!知財ビジネス】課題はコミュニケーション能力


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 ■エスキューブ・田中康子社長に聞く

 医薬品関連業界をはじめ知財経営コンサルタントとして活躍するエスキューブ(東京都渋谷区)の田中康子社長。開業当初から各社知財部門の英語教育や人材育成に関与してきた。知財を経営に生かすには「今こそ知財人材の能力に関する認識を変える必要がある」という。

 --国内大手企業に加え、米系企業の勤務経験も長い

 「合計23年間勤めた。新社会人の春、配属された知財部は非常に静かだった。誰も朝の挨拶をしないので、私も3日目に何も言わなくなった。尊敬する先輩女性部員も多く、さまざまな仕事を覚えたが、依頼された自分の仕事だけへ専念することが求められた」

 --米系企業の知財部は

 「ある外資系の場合、知財に関する決定権は各事業部の技術担当トップに、最終決裁権は米国本社にあったが、社内で知財部門がすごく尊敬されていることに驚いた。各事業部で行う研究者と技術営業担当の議論には知財部員も発言を求められた。知財部員は複数の事業部を担当し、知財部員間の情報交換も非常に活発だった」

 --外資系では会話する機会が多いわけだ

 「私の知財英語研修では最初にポイントの説明をした後、すぐにグループ討議や各自の発表を始める。参加者には頭ではなく体を動かせと教えているが、正しい答えをしようと考えて黙り込んでしまう。広い視野で状況や場面を把握しながら、話す相手をみて、どう説明すべきかを考えて対応するのがコミュニケーション能力だ。優秀で知識があっても、言葉として吐き出せないといけない。国内企業の知財部員の最大の課題はそこにある」

 --どういうことか

 「例えば知財を経営に生かすには、経営層に知財を理解してもらうこと。それには簡単な説明が求められるがなかなかできないため、経営層は知財部門や知財人材のあり方に気づかない。知財部門トップを他部門から来た幹部が担当することにもなる。知財部員の能力とは知財に関する専門能力だと一般に認識されているが、それだけでは知財を経営に生かすことにはつながらない」

 --やはりコミュニケーション能力が必要だと

 「マインドセット(ものの見方や考え方)を替えてやるだけで、すごく能力が高まる場合もある。“通じる”ことが大事だ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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【プロフィル】田中康子

 たなか・やすこ 千葉大理卒。1990年帝人入社、知財部配属。2005年にファイザー、06年住友スリーエムの知財部を経て、13年エスキューブとエスキューブ国際特許事務所を設立。弁理士。51歳。東京都出身。