
国土交通省が初めて堤防強化にインプラント工法を採用した高知市春野町の工事現場【拡大】
「東日本大震災の惨状を国民が目の当たりにし、さらに、南海トラフ地震の想定も大幅に見直された。当時の県民感情などを考えると、迅速に工事を進める必要があった」と国交省の高知河川国道事務所の担当者は言う。
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24年秋、高知市西部の仁(に)淀(よど)川河口で、国交省は「インプラント工法」による既存堤防の耐震強化工事を行った。対象となったのは、地震による液状化が想定される約700メートルの区間。堤防の高さ(10メートル)は変えず、既存の堤防を中に挟む形で、堤防の海側と陸側に鋼鉄の矢板計2400本を地中に打ち込んで壁を造り、地面の液状化による堤防の倒壊防止を目指した。
「既存のコンクリートに直接打ち込める(インプラント工法の)技術には目を見張った。工事のスピードが想像以上に速い」と高知県も驚きを隠さなかった。
=敬称略
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首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男氏が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。