都心への近さが売りの東京五輪・パラリンピックの選手村。東京都は招致時に「新国立競技場まで車で10分」とうたったが、その実現に黄信号がともっている。築地市場から豊洲市場への移転延期で、道路整備が大幅に遅れたためだ。大会後、住民の足となるバス高速輸送システム(BRT)の運行開始時期も見通せず、住宅分譲でネックとなる可能性もある。
2016年11月に市場を豊洲に移し、築地の跡地に大会の主要道路となる環状2号線(環2)のトンネル区間などを整備してバスで選手を運ぶ-。都が当初、描いていた計画は16年8月に就任した小池百合子知事が移転を延期したことで見直しを迫られた。豊洲市場の土壌汚染などを懸念したのが延期の理由だった。
結局、市場は約2年遅れの今年10月に移転することで決着したものの、大会前のトンネル整備は間に合わない。都は代わりに片側1車線の地上道路を造るが、輸送力は下がるため、選手の移動は主に首都高を利用することにした。競技会場までの所要時間の大幅増は避けられない。
繁華街の銀座やオフィス街の丸の内に近く、人気の晴海地区だが、選手村から最寄りの地下鉄駅まで徒歩で約15分かかり、アクセスが課題だ。都は都心までつながるBRTを22、23年ごろに本格導入し、4路線で1時間に最大計約2000人の輸送を目指していた。
しかし、それも環2利用が前提で、道路がないと計画は絵に描いた餅になる。担当者は「道路整備に合わせて随時運行を始める、としか今は言えない」と歯切れが悪く、分譲マンションの売れ行きを懸念する声もある。
不動産経済研究所(東京)の松田忠司主任研究員は「行政や業者は現実的な交通や暮らしの将来像を示すことが重要だ」と指摘。“未来の住人”も安心できる選手村にできるかが、大会後のにぎわいの鍵になりそうだ。