
津波で被害を受けた岩手県釜石市で状況を説明する片田教授。堤防が破壊され住宅地が浸水した=平成23年5月【拡大】
ハード整備に頼り切るようになった日本人の意識は自然に無防備になっており、各地の災害で避難の遅れを招いている。こうした日本人の意識を自然との共生へ回帰させるためにもソフト対策は欠かせないのだ。
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ただ、「ソフト対策はハード整備と防災の両輪になってこそ有効だ。災害の激甚化に対応できなくなってきたハード整備は、せめて現在の水準を維持・強化するための技術革新に取り組むべきだろう」と強調。そして、この技術革新にあたるのが技研製作所の「インプラント工法だ」と指摘する。実際、釜石では堤防復旧に同工法を導入した。
12年の東海水害など破堤氾濫による洪水災害を調査してきた片田は「従来工法の堤防の構造的欠陥は以前から知られていた。東日本大震災の前にインプラント工法が普及していたら、犠牲者数は確実に減っていただろう」とみている。
=敬称略
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首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男氏が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。