【生かせ!知財ビジネス】特許庁・金融機関支援の行方(中)

「金融機関にとって知財の切り口による企業支援はきっと役に立つはず」と話す特許庁の小林英司企画調査官
「金融機関にとって知財の切り口による企業支援はきっと役に立つはず」と話す特許庁の小林英司企画調査官【拡大】

 ■まだまだ折り返し地点

 最終年度の5年目を迎えた特許庁の「中小企業知財金融促進事業」。6月11日に今年度の受け付けが開始される予定だが、本当にこれで終わってしまうのか。同6日、福島県郡山市で特許庁が開く「知財金融セミナー~東北地域における知財×金融~」には、金融庁の日下智晴・地域金融機関等モニタリング室長が特別講演を行う予定で、特許庁と金融庁の関係は依然、良好のようである。

 特許庁普及支援課の小林英司企画調査官は「知財金融という言葉がようやく根付いてきたが、このままの形で続けることは行政として難しいと思っている。ただし、知財金融はまだまだ折り返し地点にあり、この灯を消すわけにはいかないだろう、という気持ちは正直持っている」と話している。

 その理由は、事業を開始した当初、金融機関は知財と金融の接点として、与信判断や知財担保融資の開発などをイメージとして持っていたが、同事業を利用していくうちに、金融機関が知財について考えることが、金融機関として今こそ注力すべき企業の本業支援や企業価値創造につながることに、気がつき始めているからだ。

 例えば、特許明細書には、そこに記された発明が解決する課題が書かれている。金融機関がそこから他の業態や業種、製品が持つ同種の課題解決に活用できないかと発想を広げて、発明の転用や自社導入のストーリーを描き、企業へ提案までできるようになれば、新たなマーケット獲得や市場参入を支援できる。知財の視点からの提案と支援メニューは金融機関の差別化戦略にも使える。

 実際企業にヒアリングすると、金融機関に望むことは、融資よりも今後の事業展開についての提案の方だという声は少なくはない。

 小林氏は「例えば知財ビジネス提案書のような、知財と経営につながるコンサルティング的要素を含んだ企業支援を金融機関が担えるようにできないか」と普及支援課内で構想し始めていることを明かす。特許庁の事業として認められ、予算が通れば、知財金融を引き継ぐ新たな金融機関向け支援事業となりそうだ。金融機関の本業にさらに入っていく可能性もあるが、IoT(モノのインターネット)でつながる時代、経済活性化のため省庁がつながっても文句を言う人はいないだろう。(知財情報&戦略システム 中岡浩)