
技研製作所が高知県と取り組み始めた災害時緊急対応のイメージ図。破堤した河川堤防をインプラント工法でせき止める【拡大】
技研製作所は、連続して杭(くい)を打ち込んで造る「壁」に堤防・防波堤の働きをさせる「インプラント工法」の普及に邁進している。
しかし、社長の北村精男(あきお)は「自然を克服することが目的ではない」という。北村が引き合いに出すのが、高知市の東に位置する香南市赤岡町にある生家の話だ。香宗(こうそう)川のほとりにあり、北村は今もここに住む。
「昔は生活の中に自然があった。どこで水があふれるか分かっていたので、家をかさ上げするか、下流域の住民はいち早く避難するかすればよかった」
戦後、各地で河川改修が進むにつれて、堤防“神話”が浸透し、自然と国民の意識が乖離(かいり)し始めた。北村が子供のころ遊んだ風景も一変した。
「石垣ひとつひとつにカニがいた。ホタルもトンボもたくさんいた。川もきれいで、フナやドジョウやウナギもたくさんいた。それらがいなくなってしまった。現代人は大きな罪を犯したのだと思う」
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安全なはずの堤防が、東日本大震災や近年の豪雨に対して機能を果たさなくなっている。北村は言う。
「堤防は公共事業として建設されるから、当然国民は安全だと思ってしまう。ところが、ある日突然、家が流されてしまうといったことが続いている。堤防が従来の工法で機能を果たさなくなったのなら、工法を見直すべきだろう」