【防災ヘリ墜落】「『ババババ』と爆音」「ものすごい低空飛行」…最後の30分間に何が起こった

 うっそうとした山の斜面で、生い茂る木々の隙間に見える大破した機体-。10日、群馬県中之条(なかのじょう)町の山中に9人乗りの県防災ヘリコプター「はるな」が墜落した事故は、搭乗者のうち2人が死亡、6人が容体不明で、残る1人の安否も確認できない惨事となった。事故直前には、異様に低い高度を飛ぶヘリの目撃情報もある。最後の無線連絡からヘリの現在地情報が途切れるまでの約30分間に、いったい何が起こったのか。

 「普通のヘリコプターと違う『ババババ』という爆音がした」

 山深い斜面にある墜落現場に近い長野県山ノ内町の渋峠(しぶとうげ)ホテルの児玉英之専務(47)は接客中だった午前10時ごろ、あわててホテルの玄関に出た。空を見上げると、「ものすごい低空飛行で白いヘリが飛んでいた。手が届くような低さで明らかに普通じゃない。何かの撮影か捜索なのかと思った」。

 同ホテルの前で桃の直売をしていた長野県中野市の農園従業員、土肥(どい)浩之さん(50)も、機体にペイントされた「群馬県」の文字がはっきり見えるほど低空飛行だったと振り返る。

 付近の横手山頂で宿泊施設を経営する高相重信(たかそう・しげのぶ)さん(78)は、同時間帯に目撃したヘリについて「回転のリズムが遅くなり、聞いたことのない鈍い音に変わった」と証言。長野県で山岳救助に携わった経験があり、「仲間のような存在がこのような事故に遭ってしまい残念だ」とした。

 一方、救助隊員らは陸上から現場に踏み入るのは難しいため、ヘリで上空から降り立ち、捜索に当たった。最も山頂に近い場所にヘリの胴体部分があり、やや下った場所にプロペラが散乱していた。胴体近くの地面は黒く焦げた後があり、周囲には墜落したヘリがなぎ倒したとみられる木々が生々しく残っていた。

 情報収集が思うようにいかず、群馬県が記者会見を開いたのは午後3時45分になってからだった。

 担当者によると、ヘリは県が整備した登山道「ぐんま県境稜線(りょうせん)トレイル」が新たに開通するのに伴い、危険箇所の有無などを上空から視察するために現場付近を飛行していた。視察は地元の吾妻(あがつま)広域消防本部が県側に依頼したという。

 ヘリは午前9時15分に群馬ヘリポート(前橋市)を出発し、途中で病院などに寄って1時間半後に帰還する予定だった。

 実際にヘリ側から県防災航空隊に最後の無線連絡があったのは午前9時28分。内容は着陸連絡だった。その後、口頭のやり取りはなかったが、ヘリから自動的に現在地情報が送られてくる管理システムでは、午前10時1分に現場付近を飛行しているのを最後に情報が途絶えたという。

 同隊が県側に第一報を連絡したのが午前11時45分だったため、記者から「遅いのでは」と疑問の声が上がった。しかし、担当者は「まず故障の有無などの確認をしなければならない」と釈明した。

 また、墜落について「大変残念。隊員の救助に全力を挙げて対応したい」と語った。