【終活の経済学】遺品・生前整理の極意(4)まずどこから

戸棚から100個を超える電球が出てきた
戸棚から100個を超える電球が出てきた【拡大】

  • アルバムを見ながら家族で思い出を語る元井麻子さん(左)と両親
  • 自身の「マイ・ベストショット・アルバム」を手にする大津たまみさん

 ■「4つに分類」「8秒間で結論」

 元気なうちに身の回りを片付ける「生前整理」。片付けをしたいと思うけど、どこから手をつければいいの? そんな人向けの講座を全国で開催する一般社団法人・生前整理普及協会(名古屋市中村区)。代表理事の大津たまみさんに極意を伝授してもらった。いわく、片付けは「物・心・情報」の整理だという。

 ◆「迷い」と「移動」

 まずは『自分の家の整理』を考えてみよう。

 「家財を4つに分類してみましょう」と大津さん。

 「多くの人は『要る』か『要らない』かの二者択一で考えがちですが、これでは整理は進みません。この2つに『迷い』と『移動(思い出)』を加えた4分類で仕分けることがポイントです」とアドバイスしてくれた。

 大きなブルーシートを用意し、4区画に分けて、そこに家財を置いていくとよいそうだ。

 「迷い」とは残すかどうかすぐに判断がつかない物。8秒間で結論が出なければ「迷い」に分類し、箱に入れて半年後に改めて見直す。

 「移動(思い出)」は、思い出として残す、もしくはほかの部屋に移動させる物だ。

 「机やタンスのような大きな物を手放すと、片付けの効果が実感できて励みになります。捨てるばかりでなく、リサイクル業者に引き取ってもらえばお金になることもあります」

 ◆親の心思いやって

 続いて、『親の家の片付け』の極意だ。

 「8秒間で結論」「4つに分類」は同様に進めていく。大津さんはその際に、「思い出が反映されているから物を捨てられない」という親の「心」を思いやることが重要だと指摘する。とくに言葉遣いにも注意が必要だという。

 「死んだら誰が片付けると思っているの?」「早く片付けて!」「もう勝手に捨てるからね!」。これらの言葉はタブー。「あくまで片付けの主体は親だということを忘れずに」

 また高齢者の中には、物を大切にすることが骨身にしみている人がいる。だから「捨てる」のではなく、「手放す」と言い換えること。

 「親の家の片付けは、親子関係を見直すいい機会」とも。

 ◆写真30枚でアルバム

 『親の家』を片付けると、押し入れなどから大量の写真が出てくるはずだ。

 「『マイ・ベストショット・アルバム』を作ってみたらいいと思いますよ」と大津さん。

 まず、すべての写真の中から約100枚を選ぶ。選ぶ基準は「輝いていた自分(親)」。そこからさらに厳選して30枚ほどをアルバムに収める。それぞれの写真には、いつ、どんな場面かひと言を添えておくといいだろう。

 「輝いていた過去の自分から、勇気をもらえます」。親が寝たきりや認知症になったときでも、アルバムを介護する人に見てもらうことで、「長い人生を生きてきた一人の尊厳ある人間」であることが伝わるはずだ。

 ■片付け通し伝えるべきこと探す

 難しいとされるのが“親が住む実家”の片付け。親子の意見が対立してしまうのが難しさの原因だ。だが、お互いが生前整理のメリットを意識して、うまく片付けを進めている事例もある。東京都内に住む元井麻子さん(48)が、両親の長井信一さん(79)、三女子さん(74)と2017年7月から進める、実家の片付けを紹介する。

 ◆家の広さに危機感

 両親は、麻子さん宅から自転車で15分ほど離れたところにある2階建ての一軒家に22年間、暮らしている。床面積約180平方メートル。麻子さんはこの家の「広さ」に危機感を覚えていた。

 「広さと住んだ年月に応じただけの家財がある。元気なうちに自分たちの手で物を整理してほしいと思っていた」と麻子さん。

 麻子さんは、生前整理普及協会の講座を受け、認定指導員の資格を取得。まず自分の家から片付け始めた。「自分の家をきれいにしないと、両親に片付けを迫る説得力がないですから」

 父の信一さんは16年に心臓の手術を受けたこともあって、そろそろ整理をしておかなければと考えていた。母の三女子さんは当初、「片付けができない娘が何を言いだしたのか」と思ったそうだが、麻子さんが提案した「マイ・ベストショット・アルバム」に心を動かされた。

 ◆必要な物を知る

 こうして片付けが始まった。

 とはいえ、片付けに“勢い”が出るまでには時間がかかった。麻子さんは「みんな要らない」というスタンス。三女子さんは「みんな要る」が基本。品物ごとに「ああ、これは麻子が小さかったときの…」などと思い出されてしまう。

 ほどなく三女子さんはメリットに気づく。親子で一緒に片付けることで、親の生活には何が必要で家のどこに何があるかを知ってもらえた。「これが一番良かった。すごく助かります」

 戸棚から使っていない電球が100個以上出てきたのには驚いた。食器棚の奥は、使わない食器でいっぱいだった。

 努力のかいあって、家はかなりすっきりしてきた。ただ三女子さんは、使わないものだからといって何でも捨てればいいというものではないことを改めて感じている。正月のお屠蘇(とそ)セットのように、ほとんど使う機会はなくても、家の行事・伝統、ひいては日本文化を形作る物まで整理するのは疑問だという。

 「片付けを通して子供たちに伝えていくべきことを探せれば。それがわが家の生前整理です」と三女子さんは語っている。(『終活読本ソナエ』2018年春号から、隔週掲載)