【水と共生(とも)に】日本人はもっと海外人脈の形成を

「シンガポール国際水週間」の開会式・基調講演の様子=シンガポールのマリナ・ベイ・サンズ・コンベンションセンター(グローバルウォータ・ジャパン撮影)
「シンガポール国際水週間」の開会式・基調講演の様子=シンガポールのマリナ・ベイ・サンズ・コンベンションセンター(グローバルウォータ・ジャパン撮影)【拡大】

  • 展示会のシンガポール公益事業庁(PUB)ブース(グローバルウォータ・ジャパン撮影)
  • 各国の水VIPと。筆者(左端)と米国水道協会のディビッド・ラガー会長(左から2人目)とPUBのマイケル・トウ理事(右端)(グローバルウォータ・ジャパン撮影)

 アジア最大の水国際会議・展示会の「シンガポール国際水週間(SIWW)」が7月11日までの4日間、同国のマリナ・ベイ・サンズ・コンベンションセンターで開催された。世界各国の政策関係者や水問題の専門家、水関係機関のトップが一堂に会し、水に関する諸問題を幅広く討議する場である。日本で初めて開かれる国際水協会(IWA)世界会議・展示会(9月16~21日、東京)の前哨戦として、日本から多くの関係者が参加した。

 ◆3イベント合同の基調講演

 初日の開会式では、シンガポールのターマン・シャンムガラトナム副首相が、各国からの参加者に歓迎の意を示すとともに、同国の国家戦略である(1)持続可能なスマートシティー構築(2)水とエネルギーと廃棄物のネクサス(連携)(3)革新的な技術開発による持続可能な国づくり策-を紹介した。また、同国の水関連の優位性を示すものとして、水関連企業が200社以上あり、25の水関連の研究開発センターと4000人以上の水専門家を有することを強調した。

 国賓として招かれたスリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相は、「学生時代にシンガポールに来たときは、スラム街に囲まれた植民地風邸宅がたくさんあった。それから50年、リー・クアンユー元首相の強力な指導力でシンガポールは劇的な変化を遂げ、アジアで最も豊かな国になった。スリランカの首都コロンボもメガシティーを目指し、インフラ整備などを進めている。私たちはシンガポールと協調し、その政策、技術、ノウハウを学ばなければならない」と述べた。

 スリランカとシンガポールは今年1月、自由貿易協定(FTA)を締結し、相互協力による経済発展を目指している。

 2日目の7月9日は、3イベント(SIWW、世界都市サミット、クリーン環境サミット)合同の基調講演が行われ、約2000人が参加した。冒頭、シンガポール大学のトミー・コー教授が「世界人口の7割が都市に住み、水の果たす役割が年々重要になっている。一方、温暖化の影響とみられる水災害も頻発している。自然災害に強い強靭(きょうじん)で持続可能なスマートシティーをつくるのが、私たちに課せられた使命である」と強調した。

 ◆すぐにビジネスに生かす

 シンガポールは今年、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国になっており、加盟国に対し、持続可能なインフラ整備のため資金、技術、ノウハウを積極支援する方針を示し、経済開発庁(EDB)や公益事業庁(PUB)などが支援活動を活発化している。

 SIWWの会期中、EDBやPUBの展示ブースには、多くのASEAN加盟国の水政策リーダーが招かれている。また、同時開催された「ASEAN市長フォーラム」には、ASEAN地域の市長や地域リーダー約30人が参加している。

 シンガポールでは、国(EDBやPUB)が前面に立って水ビジネスを推進している。従来は、水処理大手のハイフラックスが国内外の水ビジネスを展開してきたが、同社は現在、過剰投資と電力事業のつまずきにより、民事再生中であるため、代わりに国が前面に立っている。

 シンガポールは、研究成果をすぐビジネスに生かす戦略を取っており、これがまた見事である。水再生の2期プロジェクトでは、総額50億シンガポールドル(約4100億円)の事業に向けて、EPC(設計・調達・建設)企業の募集を2019年から開始すると公表された。

 このプロジェクトでは、日量80万立方メートルの下水を、省スペースの膜式活性汚泥法(MBR)を使って再生水を造る。その過程で発生する汚泥と他の廃棄物(有機系食品廃棄物など)を混ぜて発電に利用する計画で、25年の完成を目指している。

 このプロジェクトについて、オランダはSIWWの会期中、シンガポールの建設大手HSLと協定を結んだ。同社は、得意とする節水農業技術でアグリフーズの収率を3倍に上げるとともに、高効率なメタン発電技術を模索しており、「水とエネルギーと食料増産の三位一体」の考えを提案している。

 また、PUBは、省エネ機器の開発提携先として世界的なポンプメーカー、グルンドフォス(本社・デンマーク)と高効率ポンプの開発と水に関するデジタルソリューションでMOU(覚書)を締結した。

 併設された展示会は、水処理の技術、サービス、製品をテーマとする総合見本市となっており、大きな盛り上がりをみせた。SIWW事務局によると、会期中、世界110カ国から約2万4000人の参加があり、約1100ブース超の展示規模となった。これは、前回16年のSIWWと比べて25%の増加である。

 パビリオンは、前回の18カ国・地域(シンガポール、米国、カナダ、デンマーク、イスラエル、中国、ドイツ、英国、韓国、オランダ、台湾、日本など)に、新たにスイス、ベルギーが加わり20カ国・地域が展示を競った。

 ◆“日の丸技術”をPR

 日本は、日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催する「ジャパン・パビリオン」を設けた。福岡市、横浜市、日本下水道協会、水といのちとものづくりの中部フォーラム、横浜市水ビジネス協議会など27団体がブースを構え、“日の丸技術”をPRした。ジャパン・パビリオンには、シンガポール環境庁のロニーティ長官も視察に訪れ、初日から2日間で721件の商談が寄せられるなど大いににぎわった。

 単独で大ブースを構えていた日本企業は、メタウォーター、東レ、日東電工、明電舎、JFEエンジニアリング、堀場アドバンスドテクノ、栗田工業、三菱電機、島津製作所、DOWAなど。日本企業のブースは開催国シンガポールに次ぐ存在感を示していた。

 残念だったのは、海外の水VIPとの交流の場(歓迎セレモニー、シンポジウムなど)に日本人の姿が少なかったことである。もっと積極的に海外人脈の形成に取り組むべきだろう。

 SIWWは隔年で開かれており、次回は20年7月5~9日に同じ会場で開催される予定だ。

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【プロフィル】吉村和就

 よしむら・かずなり グローバルウォータ・ジャパン代表、国連環境アドバイザー。1972年荏原インフィルコ入社。荏原製作所本社経営企画部長、国連ニューヨーク本部の環境審議官などを経て、2005年グローバルウォータ・ジャパン設立。現在、国連テクニカルアドバイザー、水の安全保障戦略機構・技術普及委員長、経済産業省「水ビジネス国際展開研究会」委員、自民党「水戦略特命委員会」顧問などを務める。著書に『水ビジネス 110兆円水市場の攻防』(角川書店)、『日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む』(技術評論社)、『水に流せない水の話』(角川文庫)など。