ビッグデータはある、足りないのは「ロングデータ」だ 「人×AI」で気づいたこと (1/5ページ)

【HILLS LIFE Daily】レシピを考案する人工知能(AI)「Food Galaxy」と、人気フレンチシェフ・松嶋啓介氏が“対決”するディナーイベントが、原宿の「KEISUKE MATSUSHIMA」にて開催された。通算4回目となる同イベントだが、今回は「知性とは何か」がテーマとなった。その理由を、イベントの仕掛け人である石川善樹(予防医学博士)に訊ねた。

「手長エビのタルタル3種」。今回は塩を極力使わないと決めた松嶋は、ハーブ(上)、スパイス(中)、オニオン(下)で味付けを施した。

「手長エビのタルタル3種」。今回は塩を極力使わないと決めた松嶋は、ハーブ(上)、スパイス(中)、オニオン(下)で味付けを施した。

「イチジクのカラスミ風味」。「『知性の象徴がリンゴ』というのは、あくまでキリスト教圏の話で、イスラムの人たちにしてみれば『いやいや何言ってるの、オレたちはイチジクって聞いてるよ』となるはずです。そういうこともあって考えてみたひと皿です」(松嶋)

「イチジクのカラスミ風味」。「『知性の象徴がリンゴ』というのは、あくまでキリスト教圏の話で、イスラムの人たちにしてみれば『いやいや何言ってるの、オレたちはイチジクって聞いてるよ』となるはずです。そういうこともあって考えてみたひと皿です」(松嶋)

AIが考えた「紅茶風味のラタトゥイユ」(右)と、松嶋のレシピによるラタトゥイユ(左)。「普段、僕が作っているやり方だと、うまく紅茶の風味がパプリカに染み込まないと思ったので、別のやり方を考えました。紅茶とパプリカの組み合わせは思いのほかおいしくて、驚きました」(松嶋)

AIが考えた「紅茶風味のラタトゥイユ」(右)と、松嶋のレシピによるラタトゥイユ(左)。「普段、僕が作っているやり方だと、うまく紅茶の風味がパプリカに染み込まないと思ったので、別のやり方を考えました。紅茶とパプリカの組み合わせは思いのほかおいしくて、驚きました」(松嶋)

 トマトは、黄金の知性の象徴!?

--まず、どのようにして今回のテーマが設定されたのか教えてください。

石川 先日、松嶋啓介さんと一緒にニースの市場へ行ったんです。そのとき、黄色いトマトを目にしました。「何ですかこれは?」と聞いたら、「その昔、南米から初めてイタリアにトマトが来たときは黄色だった」と、松嶋さんは教えてくれました。

トマトって、イタリア語でポモドーロといいますよね。よく考えてみると、「pomo=リンゴ」+「d’oro=黄金」、つまり「黄金のリンゴ」という名称なんです。松嶋さんによると、トマトは最初、観葉植物としてイタリアに入ってきたのだそうです。何でも、毒が入っていると思われていたのだとか。で、飢餓が起きたときに「もう食べてしまえ」ということで食べてみたら、とてもおいしかったと。飢餓を救ってくれたということで、やがて「トマト=黄金のリンゴ」は「黄金の知性」と見なされるようになったそうです。そもそもリンゴは、アダムとイヴの話にもあるように、キリスト教文化圏では知性の象徴とされていますからね。

食のAIである「Food Galaxy」と松嶋さんのコラボレーションは、これまでに「すき焼き」「ハンバーグ」「デンマーク料理」と回を重ねてきましたが、ニースのマルシェでのそんな会話の流れで、次は「トマト=知性」をテーマにやってみましょうということになったんです。

「やっぱり何か違うよね」