今年はミシュランにも掲載! 復権かける大阪寿司、再び寿司界の“主役”となるか (3/3ページ)

吉野寿司の箱寿司。小鯛やキクラゲ、エビなど。すし飯の間にはシイタケや焼き海苔を挟んで押されている(鳥越瑞恵撮影)
吉野寿司の箱寿司。小鯛やキクラゲ、エビなど。すし飯の間にはシイタケや焼き海苔を挟んで押されている(鳥越瑞恵撮影)【拡大】

  • 新しい大阪寿司を提案した伝承料理研究家の奥村彪生さん=大阪市西区
  • ミツカンと伝承料理研究家の奥村彪生さんが提案した柿(こけら)寿司。彩りも美しい

 縦横二寸六分(約7.9センチ)の長さの箱におさめたところから「二寸六分の懐石」とたとえられるほど、計算された配列と彩りは美しく、かみしめることでうま味が口の中に広がる。芝居見物やハレの日の料理、おもたせとして、当時の船場の旦那衆に絶大な支持を得たという。

 じっくり味わって

 先の大戦が終わり、関西でも江戸前の寿司が急速に広まった。大阪寿司を作っていた店の多くが江戸前へと転換した。にぎり寿司と平行して箱寿司を復活させた吉野寿司だったが、7年前、代替わりしたばかりの橋本さんが、「箱寿司一本でいく」と決めた。当初、売り上げは激減したものの、外注していたネタを、すべて店の職人たちの手で作るように変えるなどしていった結果、大阪の人たちにも再び箱寿司を食べてもらえるようになった。

 「できたてがおいしさのピークである江戸前寿司と異なり、押すことでネタとすし飯が密着する大阪寿司は、酸化しにくく、すぐに食べなくてもおいしさは持続します。江戸前は職人のための『ファストフード』、大阪寿司は『スローフード』といえるのです」と橋本さん。

 全国各地の郷土寿司に詳しく、寿司研究の第一人者である清水すしミュージアム(静岡県清水市)名誉館長、日比野光敏さん(58)は「郷土寿司の数は全国に約200種以上ありますが、残す努力をしないと次世代に伝えられない。大阪寿司をはじめ、郷土寿司に光が当たるのはとても好ましいことです」と話している。