今回の調査で浅草とのつながりを発見した西宮神社は昨秋、浅草神社に呼びかけ、交流が再開された。浅草神社では年明けから、御神影札を参拝者に授与する当時の習わしを復活させており、矢野幸士禰宜(ねぎ)(45)は「庶民の神様であるえべっさんの信仰を浅草からも再び広めたい」と意気込む。
矢野禰宜は西宮神社で1月9~11日の3日間開催され、約100万人の参拝者が訪れた十日えびすを視察。賽銭(さいせん)が貼り付いた「招福大マグロ」や鯛などの小宝が付いた福笹(ふくざさ)などを見て回った。
案内した西宮神社の吉井良英権宮司(57)は「えべっさんの縁起物は福笹のほか、熊手や箕(み)にお面をつけた『吉兆』と呼ばれるものが昔から授与されている」などと説明。参道が商売繁盛や家内安全を願う人でにぎわう様子を見た矢野禰宜は「信仰が昔と変わらず庶民に根づいている」と驚いた表情を見せた。
えびす信仰の復活を目指す浅草神社では来年1月に十日えびすにちなんだ二十日えびすを開催する。吉井権宮司は「庶民の聖地としてにぎわう浅草で、庶民の神様として信仰されるえべっさんが広がるのは有意義なことだ」と話している。
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【用語解説】えびす信仰
商売繁盛の神様「えべっさん」への信仰。えべっさんは左脇に鯛を抱え、右手に釣りざおを持つ姿で描かれることが多い。江戸時代には、西宮神社近くを拠点にする芸能集団がえべっさんの人形で神徳を説く芸能「えびすかき」を行って信仰を広めた。同神社によると、えべっさんを祭った神社は今宮戎神社(大阪市浪速区)や恵美須神社(京都市東山区)など西日本を中心に全国で3500社以上あり、「十日えびす」「えびす講」といった行事が現在も盛んに行われている。