高論卓説

自然災害多発で高まる必要性、求められる本格的な病院船 (1/3ページ)

戎崎俊一

 病院船とは戦争や大災害の現場で、傷病者に対して医療サービスを提供するための船舶である。2回の世界大戦においては、客船を改造した病院船が活躍した。現在はアメリカ海軍の病院船マーシーが有名である。タンカーを改造してできたマーシーは排水量6万9360トン、1000病床、12の手術室を有する堂々たる総合病院である。コンピューター断層撮影装置(CT)や超音波検査装置など最新の診断装置を備え、各種の医療用ガス、真水(1日281トン)を生産する能力を持つ。2004年に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震による津波災害の救援に派遣され、多くの人命を救う活躍をした。特に、CTなどの検査装置が、的確な診断に威力を発揮したとされている。(理化学研究所 戎崎計算宇宙物理研究室 主任研究員・戎崎俊一)

 日本においては、太平洋戦争時に氷川丸が病院船として活動した。戦後、自衛隊は病院船を持っていないが、輸送艦・護衛艦に「野外手術システム」を搭載することで高度な医療機能を確保するとされている。日本においても本格的な病院船の導入を求める声は繰り返し起こっている。1998年には山中●子衆議院議員(当時)が国会予算委員会で、(1)大災害時の救急医療(2)離島の巡回医療(3)アジアへの貢献-に資するための「多目的病院船」の導入を提案している。(●=火へんに華)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus