もっとも責められるべき人間は、もちろん命を直接奪った勇一郎被告だが、本来心愛さんの資源となるはずだった大人たちの責任はどうなのだろうか。暴力的で支配欲の強い男と対峙するのは、厄介な事態に巻き込まれることもあるし、恐怖を感じることであろう。しかし、誰かが勇気ある行動、適切な判断をしていれば、一人の子供の命が救われたかもしれない。虐待が疑われる児童の周りにいる大人たちは、自分がその児童の命綱かもしれないという自覚を持たねばならないと思う。
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【プロフィル】舟木彩乃
ふなき・あやの ストレス・マネジメント研究者。メンタルシンクタンク副社長。筑波大大学院ヒューマン・ケア科学専攻(博士課程)に在籍中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)がある。千葉県出身。