暖かくなると増える「カビ」 感染症やアレルギーの原因に…重症化の恐れも

 

 気温の上昇とともに気になるのが浴室やキッチンなど水回りの汚れ。気を抜くとカビが生えていることもある。カビは肺炎など健康被害を引き起こすことがある。特に免疫力が低い高齢者は重症化の恐れもあるので注意が必要だ。(平沢裕子)

 発がん性も

 真菌の一種、カビによる健康被害は(1)カビそのものによる感染症(2)アレルギー反応(3)中毒-などがある。

 まず、これからの季節に注意したいのは、カビの生えた食品による健康被害。

 カビの中には人体に有害な物質(カビ毒)を作るものがある。特にアフラトキシンと呼ばれるカビ毒は発がん性が強く、加熱したり水につけたりしても毒性が変わらない。

 東京都の輸入食品の調査では、ピーナツやトウモロコシ、そば粉、香辛料など多くの食品から検出されている。国のモニタリング調査などで基準を超えたものは食品衛生法違反となるため販売されないが、家庭で保存状態が悪い場合は増殖する可能性もある。

 衛生微生物研究センターの李憲俊(のりとし)所長によると、食品の表面に付いているカビを削り取っても、内部のカビ毒はなくならない。このため、「カビが生えたものは食べてはいけない」と指摘する。

 高齢化で患者増

 室内に発生するカビはアレルギーや感染症の原因となる。5月から10月に多く見られる夏型過敏性肺炎は、夏季に高温多湿となる日本特有の病気だ。原因は、湿気の多い家屋や管理の悪い水回りなど室内に発生するトリコスポロンというカビ。吸い込むことで肺の奥でアレルギー性の肺炎を起こす。

 症状は夏風邪に似ており、しつこいせきや息切れ、発熱がみられるのが特徴だ。慢性化すると肺胞(肺を構成する小さな袋)の壁(間質)が厚くなり、肺が固くなる「肺線維症」になったり、血液中の酸素が減少して皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼになったり重症化することもある。

 千葉大真菌医学研究センターの亀井克彦教授(臨床感染症)は「症状を起こさないようにするには、原因となるカビの駆除が必須。中には自宅の改築や転居を余儀なくされる人もいる」と話す。

 せきや微熱から始まり、血痰や吐血などの症状が出る「慢性肺アスペルギルス症」も空気中にごく普通に存在するアスペルギルスというカビが原因で発症する病気だ。ぜんそくやCOPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)、糖尿病などの患者、結核になったことがある人、喫煙者、免疫力が落ちている高齢者などは特にかかりやすいので注意が必要だ。

 かかってしまうと薬が効きにくく、呼吸不全を起こして死亡することもある。亀井教授は「高齢化の進展で患者は増えることが予想される。過度に心配する必要はないが、カビが生えない環境づくりが大切だ」と助言している。

 ■水回りの換気・乾燥、徹底を図る

 衛生微生物研究センターの李所長によると、(1)温度(2)湿度(3)ホコリや汚れなどの栄養源-の3つの条件がそろうとカビが増殖する。増殖を防ぐには、室内の換気や寝具の手入れなどが欠かせない。

 カビは空気が動かない所に生えやすいため、ときどき窓や扉を開けて風を通す。湿度が上がる季節には、寝具にもカビが生えやすい。布団は干すなど小まめに手入れを。

 カビの栄養源となる人間の皮脂やアカが付着しやすい浴室は使用後、換気するだけでなく拭き取りも併せて行い、乾燥に努めよう。

 また、カビは低温でも増えるので、食品の保管では、冷蔵庫を過信しないことも大切だ。