大腸がん、検診で早期発見を 初期はほぼ自覚症状なし…進行気づかず
俳優の今井雅之さん(54)が4月に会見し、ステージIVの大腸がんであることを告白した。やせ細り、か細い声で病状を説明する姿に、ショックを受けた人も多いだろう。大腸がんは、比較的治りやすいがんの一つだが、初期には自覚症状がほとんど出ないこともある。専門家は早期発見のため、定期的に検診を受けるよう呼びかけている。(油原聡子)
男性の11人に1人
大腸は、小腸を取り囲むように存在する全長約1・5メートルから2メートルの管状の臓器だ。大きく分けて、結腸と直腸に分かれており、消化の最終段階を行う。結腸では水分を吸収して便を作り、直腸では便をためる機能がある。
大腸がんは、大腸の内側の表面にある粘膜に発生する。食の欧米化などにより、近年増加傾向にある。国立がん研究センターの平成23年のがん登録データから推計すると、生涯で大腸がんに罹患(りかん)する確率は、男性が11人に1人、女性が14人に1人。身近ながんの一つだ。
がん研有明病院消化器センター大腸外科部長の上野雅資医師は「年齢が高いほど罹患しやすい」と指摘する。40代後半から増加し、同病院で手術を受ける人の平均年齢は60代前半だという。
大腸がんになると、便に血が混じっていたり便秘になったりするほか腹痛などの症状が表れるが、初期にはほとんど自覚症状が出ない。また、肛門から離れた場所にがんができると、症状が表れづらい。「症状が表れた頃には、がんが進行してしまっていることが多い」と上野医師は話す。
遅い進行
大腸がんの診断には、内視鏡を入れて大腸内を観察する「内視鏡検査」が行われる。がんと疑われたら、病変の一部を採取し、病理検査で組織を調べる。
進行度はステージIからIVまでの4段階あり、がんが大腸の壁に入り込んでいる程度とリンパ節や肝臓などほかの臓器への転移などから判断する。
自覚症状が出るのは、ステージII以降がほとんど。転移する場合は肝臓や肺へが多いが、大腸がんは進行が遅く、早期から転移が進むことはないという。このため、「早期に発見できればほとんどの場合、治癒が期待できる」。
がんが粘膜の浅い層にしか入り込んでいなかったり、リンパ管や血管に転移していなかったりする時は、内視鏡での切除が可能なことが多い。
その他のケースで外科手術を行う場合には、がんのある部分と転移している可能性のあるリンパ節を切除。残った腸管をつなぐ。術後の経過が良ければ、入院期間は10日程度だという。ただ、肛門付近の手術後は便の回数が増えるなど排便習慣が変化するケースもある。
転移の箇所が多くて切除できなかったり、リンパ節などに転移があったりする時には、再発予防のため抗がん剤療法が行われる。
40歳以上は定期的に
他の臓器への転移がみられるステージIVだと、同病院での5年生存率は3割程度とされるが、転移の数が限られている場合などは治癒する可能性は十分あるという。
早期発見に有効なのは大腸がん検診の「便潜血検査」だ。便の中に混ざっている血液を検出する。無料で受けられる自治体もある。上野医師は「大腸がんは診断も簡単で比較的治りやすい。早期発見のためにも40歳以上の人は定期的に検査を受けてほしい」と話している。
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