香港MTR・軽鐵(ライトレール)(2)ライトレールの終点は“カジノ”目当てのマカオ行きフェリー
江藤詩文の世界鉄道旅香港郊外の「新界(ニューテリトリー)」でもっとも賑わう繁華街「元朗(ユンロン)」にやって来た。ここはライトレール全11路線のうち4路線のターミナルになっている。ちなみに乗車料金は一律ではなく5区間に分かれていて、走行区間に応じて運賃が変動する。つまり“乗り放題”の乗車券を買った私は、5区の「元朗(ユンロン)」から乗車するなら、1区まで行くともっともお得でモトが取りやすくなるわけだ。
11路線の制覇を狙おうと意気込んだが、環状線があったり分岐したり途中で停まったり。路線図とにらめっこしていたら頭痛がしてきた。路線を重複せずひと筆書きで行く方法はないものか。運転士に尋ねてみると、国は違えどやはり同じことを考える人はいるようで、香港の鉄道ファンのあいだでも、どういうルートで乗車すれば全線完走できるか議論を呼んだそうだ。で、結論としてひと筆書きは不可。それなら香港式ミルクティーでも飲みながら車窓を楽しもうと思いきや、車内での飲食(と喫煙)は禁止されている。1区の起終点駅は「屯門(チュンムン)フェリーピア」で、海沿いに遊歩道があるという。乗車時間は約40分。のんびりと海を目指した。
「屯門(チュンムン)」地区は高層マンションが建ち並ぶ住宅街で、フェリーターミナルは今年1月28日に運用が開始されたばかりだ。マカオとのあいだを40分ほどで結ぶ高速船サービス「ターボジェット」が1~2時間おきに往復している。中国の深センまで行く便もある。とくにマカオ線は利用客が多く、順次増便しているそうだ。
観光客が香港を経由してマカオへ行く場合、香港国際空港から直接ボートに乗り継ぐこともできるし、香港島の「上環(ションワン)」にも九龍の「尖沙咀(チムサーチョイ)」にもフェリーターミナルがある。いったいなぜ郊外にあるフェリー乗り場が混雑するのだろうと思ったら、地元の人たちがマカオへ日帰りで出かけるそうだ。目的はカジノ。ちなみに深センは香港と比較して物価が安いため、こちらへは日用品の買い出しに出かけるとか。
なるほど。海を見ながら煙草をふかしているおじさんたちは、もしかしたらカジノで負けて帰ってきたのかもしれない。遊歩道には、所在なさげなジャンパー姿が点々と佇んでいた。
■取材協力:香港政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
関連記事
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】香港MTR・軽鐵(ライトレール)(1)香港で見つけたもうひとつの“路面電車”
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】香港トラム・トラモラミックツアー(2)日本の“乗り鉄(私)”が出合った香港の“撮り鉄”たち
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】香港トラム・トラモラミックツアー(1)香港の名物トラムに1920年代レトロ車両が復活
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】和諧長城号(2)鉄道旅の楽しみは“買い食い”と“アツアツのお茶”
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】和諧長城号(1)“万里の長城”まで…電車代は110円!?「安かろう悪かろう」かと思ったら…
- 【江藤詩文の世界鉄道旅】ヒジャーズ・ヨルダン鉄道(3)知られざる“鉄道好き国家” あちこちに残る鉄道全盛期の記憶
- その他の最新ニュースはこちら