越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)(1)呑み鉄にはたまらない、大人のための“日本酒列車”
江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画先週お話した通り、私は「GENBI SHINKANSEN/現美新幹線」の車内で未練を残しつつ「カーブドッチ」のワインやビールに背を向けた。その理由は、GENBI下車後にこれへの乗車が控えていたからだ。“酒どころ新潟”で、“厳選された銘柄の日本酒”を、心ゆくまで堪能できるという呑み鉄のためのパラダイス列車『越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)』。
それにしたって世界でも類をみないこんな列車、いったい誰が発案したんだろう。すばらしすぎる。そう駅員に尋ねてみると、運行を担当しているのはJR東日本新潟支社だという。さすが酒天国のお膝元。JR東日本に確認したわけではまったくないが、きっと新潟支社には酒好きの酒豪が溢れているに違いない。車掌からは「そうですね、まあ数多くの銘酒があるうえ、新潟は魚も酒肴(さかな!)もうまいですから。酒豪はどうでしょうか」。と、いかにも酒呑みらしいダジャレ混じりの含みのある答えが返ってきた。
日本酒列車は3路線を運行していて、いずれも「上越妙高」駅をターミナルとして、「十日町」駅発着が「越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)」、「越後湯沢」駅発着が「ゆざわShu*Kura」、「新潟」駅発着が「柳都Shu*Kura(りゅうとしゅくら)」と、いずれも風雅な名で呼ばれている。休日を中心に運行されていて全車が指定席だ。途中駅での乗降車も可能で、私は「直江津」駅から乗り込んだ。
越後の酒蔵と豊かな自然をイメージして命名されたという「越乃Shu*Kura」。越乃は越後地方、Shuはもちろん酒、Kuraは酒蔵、*は新潟らしく米・雪・花を意味しているそうだ。新潟といえば米と雪……までは納得できるが、花も名物なのか。“花より団子”な私は、新潟の酒といえばすぐにいくつもの名前を列挙できるが、花といわれてもひとつも思い浮かばない。
そんな私に新潟の花の名を教えてくれたのは、直江津駅に停車していた「えちごトキめき鉄道」の花をペイントしたかわいらしい車両だ。えちごトキめき鉄道といえば、2015年の北陸新幹線開業に伴ってJRから分離し、第三セクターとして新潟県上越地方の在来線を運行している。そしてこの春から「えちごトキめきリゾート雪月花」を走らせ始めたあの会社ではないか。「雪月花」のフランス料理を手がけているのは、私もファンの六本木の二ツ星フレンチ「Restaurant Ryuzu(レストラン・リューズ)」の飯塚隆太さんで、こちらもかなり気になっているのだ。
しかし新潟ってば。米があって酒があって温泉があって、そのうえ観光列車が盛りだくさんなんて、ちょっとずるくないですか。
『越乃Shu*Kura(こしのしゅくら)』へ乗車する前から、私はすでに新潟への再訪を誓っていた。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
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