きかんしゃトーマス号(3)どちらが正解? “トーマス”は乗って楽しむか降りて楽しむか
江藤詩文の世界鉄道旅・夏休み特別企画鉄道ファンには“乗り鉄”“撮り鉄”“収集鉄”“スジ鉄”などさまざまなカテゴリーがあるが、それらの嗜好はいつどのように細分化されるのだろうか。客車に立ち込めた石炭の煙に目をしばたたかせながら、周囲の子どもを観察する。
彼ら(前回のコラムへ参照)は4歳から5歳の幼稚園児たち。大井川鐵道沿線で生まれ育ち、鉄道に親しみを持っているという背景に差違はない。しかしこの年齢にしてすでに、好みがはっきり形成されている。車内放送で流れるトーマスの声にざわめき、車窓にいちいち歓声を上げる子がいる一方、出発前のプラットフォームでスマホやタブレットを器用に使いこなし、車体を撮影していたときのほうが、明らかにテンションが上がっていたグループが確かに存在しているのだ。
大井川鐵道もそれに気づいたのだろう。今シーズンからは「きかんしゃトーマスと大の仲良し」という設定で、やさしげな顔つきの真っ赤なバス「バスのバーティー」が登場した。バーティーはトーマスの支線のそばの道路を運行し、走っているトーマスやジェームスのかっこいい姿を間近で眺めることができる。まさに“撮り鉄”系キッズにうってつけのバスだ。片道はトーマスやジェームスに乗り、片道はバーティーで追いかけるといった夢のルートも実現できるのだ。
それだけじゃない。到着した千頭駅では「トーマスフェア」が開催されていて、石切り場の仕事を手伝う働き者の高山鉄道機関車「ラスティー」や、トーマスのいちばんの友人でいたずら好きな蒸気機関車「パーシー」、日本からやって来た蒸気機関車「ヒロ」といった人気キャラが勢揃いして乗客を歓迎しているのだ。“撮り鉄”の萌芽を見せ始めた子どもたちが狂喜乱舞したのは言うまでもない。展示された「パーシー」や「ヒロ」の運転台に上ることもできる。
そうそう、周辺にはもうひとつ“撮り鉄”向けスポットがあった。出発した新金谷駅と到着した千頭駅のちょうど中間地点あたりに位置する川根温泉付近の川原では、汽笛を鳴らしながら走るトーマスのダイナミックな姿を撮影できる。“撮り鉄”系キッズはこちらもお見逃しなく。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら
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