古きよきアメリカ西部のカウボーイ グランドキャニオン レイルウェイホテル(1)

江藤詩文の世界鉄道旅
ホテルのメインエントランス付近には、1923年製のシェイ式蒸気機関車の現物が展示されている

 バンッ、バーンッ!!

 すぐ近くで銃声が響き渡る。まったく予期していなかったうえピストル音に不慣れな私は、思わずびくっと立ち止まりあたりを見回した。初めて訪れる街ではいつも少しだけ臆病になる。そのうえここはアメリカ西部。ウイリアムズのダウンタウンは暮れなずんでいた。

 グランドキャニオン鉄道が運営するアメリカらしいホテル「グランドキャニオン レイルウェイホテル」がある街ウイリアムズは、かの有名なアメリカ横断路「ルート66」上にある。アメリカ文化発祥の国道といわれる「ルート66」はアメリカ人の誇り。チェックイン時にも真っ先にウイリアムズのダウンタウン散策を薦められた。ホテルからダウンタウンまで徒歩5分。治安は比較的いいと言う。そう聞いて外に出た途端にこれだ。

 ま、後でわかったことだが銃声は空砲で、ストリートパフォーマーによる演出だった。銃の音を聞いても誰も驚かず子どもまでゲラゲラ笑っている。パフォーマンスをしているのは本物のカウボーイ。現在のカウボーイたちは観光業に就いたりパフォーマーになったりするほか、パークレンジャーとして環境保護にも力を入れているそうだ。ショートコントのような演し物はとてもおもしろかったが、銃の乱射は心臓に悪いのでほんとやめてほしい。

 さて、“絶景”といえば必ず名前が挙がる米アリゾナ州のグランドキャニオン国立公園。鉄道ファンがグランドキャニオンを鑑賞するなら、そのために運行している観光列車「グランドキャニオン鉄道」と組み合わせたい。「グランドキャニオン レイルウェイホテル」は、その始発駅「ウイリアムズ」に隣接している。

 グランドキャニオン国立公園内にもホテルやコテージがあり、キャンプをすることもできる。長いバカンスをとる欧米人が鉄道に乗車する場合、乗車前日にグランドキャニオン レイルウェイホテルに泊まり、朝の列車でグランドキャニオンへ行き、公園内で2日~1週間ほど過ごし、午後の列車で戻ってきて下車後に再びホテルへ宿泊するパターンが多いようだ。つまり彼らはグランドキャニオン観光に1週間から10日ほどもかけるというわけ。「日帰りで往復する」と言うと驚かれ、「さすが日本人」と変に感心されてしまった。

■取材協力:ブランドUSAアメリカン航空

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら