中年よ、正しい盛り上げ方を知っているか… 忘年会で使える「スゴイ合いの手」
衆院選が終わった。友人・知人が立候補したので、何度も演説会に足を運んだりした。しまいには、選挙カーの上で人生初の応援演説までしてしまった。演説というものは熱気があってテンションが上がるものである。演説に合わせて「そうだ!」「搾取だ!」などと叫ぶと妙な盛り上がりを見せるのだ。
その場に身を置いて確信した。中年は「合いの手」でテンションが上がるものなのだ、と。ライブにしろ、カラオケにしろ、社内のイベントにしろ、「合いの手」こそ中年力が試される点ではないか、と。中年として、これはマスターすべきではないか、と。
合いの手が試されるのは、「カラオケ」だ。サビや掛け声をするだけではまだ甘い。例えば、フィンガー5の「学園天国」やチェッカーズの「ギザギザハートの子守唄」で「ヘイ」という声を合わせるだけでは弱すぎる。郷ひろみの「2億4千万の瞳」に合わせて「億千万、億千万」と絶叫するのも当たり前すぎる。「わかっていらっしゃる」とか「この合いの手はスゴイ」と言われる合いの手こそ、中年の合いの手偏差値が試される場である。
◆中年なら押さえたい「合いの手」超初級編
まずは、アン・ルイスの「あゝ無情」での「フウフウ」から始めてみよう。これは超初級編だ。もともとの楽曲には「フウフウ」という声はないし、歌詞にももちろん存在しない。しかし、歌に合わせて「フウフウ」と叫ぶのはもはや定番となっている。YouTubeで「あゝ無情」と入力すると「合いの手」が検索候補に登場するほど定番化している。
同じく初級編で言うと、歌手名を連呼するという手もある。カラオケで松田聖子を歌う人がいたら、アップテンポの曲で、ところどころ「聖子!」と叫ぶのは中年の流儀である。「夏の扉」や「青い珊瑚礁」などは入れやすい。逆に「SWEET MEMORIES」や「赤いスイートピー」などは歌を邪魔しないのが流儀だ。
当時、明菜派だったアナタ。負けてはいけない。いかにも分かりやすい聖子の合いの手と、中森明菜の合いの手は本質的に異なる。明菜の場合は、合いの手創作力が問われる。たとえば、「十戒」だ。イントロで「一戒、二戒、三戒、四戒…」とカウントアップをし、「十戒!」と叫んでから歌に入る。これは難易度が高いが、盛り上がること間違いない。
「十戒」は難しいというアナタ。「DESIRE」から始めてみよう。サビに合わせて「ほら、どっこい!」と叫ぶと、場末感がアップすること間違いなしである。カラオケボックスというよりは、スナックのカラオケでやることをオススメする。
◆中年なら「X」でマウンティングしろ
合いの手だけでなく、身振り手振りで盛り上げるという手もある。西城秀樹の「YOUNG MAN (YMCA)」などは分かりやすい。また、時節柄、自粛モードが漂っていたCHAGE and ASKAだが「YAH YAH YAH」に合わえて拳を振り上げるのもナイスだ。歌詞に合わせて嫌いな上司の名前などを連呼するのもグーだ。
お馴染みのムーブでも盛り上げたい。中年たるもの、キーなど無視して、Xの「X」を歌うべきだ。「X JAPANじゃないか?」という声もあるだろう。「いや、初期はXだったんだ」「XとX JAPANは楽曲もアティチュードも違う」などとマウンティングしてこそ中年である。余談だが、私はYOSHIKIに対するTwitter質問企画で「XとX JAPANの違いは?」と聴いたら「良い質問ですね。あの頃の方が傍若無人だったかな」という返信がきたぞ。Xジャンプはお約束だ。メタボの腹を震わすのだ。
中年の底力が試されるのはTHE BLUE HEARTSの曲である。あのジャンプを息切れせずにどれだけ繰り返すことができるか。これまた、体力と、体型が問われるだろう。
さらにはコール・アンド・レスポンスだ。ライブでお馴染みだ。何か呼びかけて、相手の反応を得る、と。
今時の若者は、地下アイドルのライブのように、カラオケをケミカルライトで盛り上げたりする。気持ちは分かる。ただ、我々中年は、フィジカルな力でカラオケを盛り上げたいものだ。さあ、忘年会シーズンだ。合いの手力で若い奴らを圧倒せよ! ネクタイはもちろんハチマキに!
【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。
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【常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は隔週月曜日。
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