今年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が決定した。最高プライズの大賞には、「トヨタRAV4」が選ばれた。輸入車の中の最高栄誉は「BMW 3シリーズ」。革新的な技術が評価された「日産スカイライン」は、イノベーション部門賞に輝き、エモーショナル部門賞は「ジープ・ラングラー」。スモールモビリティ部門賞は、第一次選考を突破した4台の中、「日産デイズと三菱ekワゴン、ekクロス」が受賞したのである。
誰が決めているのか
今年の賞レースは、比較的順当な結果に落ち着いたといえよう。大賞を受賞した「RAV4」は、当初は苦戦が予想されていたが、最終的には圧勝だった。それぞれの部門賞も、誰もが納得する形におさまった。
大賞に輝いた「RAV4」を無得点としたのは60名の選考委員のうちの3名だけである。インポートカー・オブ・ザ・イヤーに輝いた「BMW 3シリーズ」を無得点としたのも60名中3名である。他の57名は評価の高低があるとはいえ、ほとんど多くの選考委員が相応しいと判断した。
ところで、そもそも日本カー・オブ・ザ・イヤーは、誰が決めているのか…。1980年に創設された老舗であり、もっとも権威がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー以外にも「カー・オブ・ザ・イヤー」を名乗る団体も存在しているけれど、日本カー・オブ・ザ・イヤーがもっとも長い歴史を持ち、重みがあるのだ。
日本カー・オブ・ザ・イヤーは、日本のメジャー自動車媒体が組織した実行委員会が運営する。有名な雑誌やWebのほとんどがメンバーに加わっている。そして、その長が推薦した専門家の中から投票で、得点を獲得した上位60名が選考委員となり、クルマへの投票権を持つ。つまり、メジャー媒体が選んだ、メジャーな専門家によるプライズが日本カー・オブ・ザ・イヤーなのである。権威の裏づけはそこにある。
一度選考委員になれば安定…ではない
実行委員が入れ替わることも少なくない。媒体として機能していなければ勿論、日本カー・オブ・ザ・イヤーの基本精神に賛同しているかも資格に影響する。
選考委員の選出も毎年繰り返させる。一度選考委員になれば安定などではなく、日々自動車に関して見識を深めていないと振り落とさせることもある立場なのだ。
配点も公表される。最終選考会のステージでは、選考委員一人ひとりの名前と配点が発表される。責任の所在が明らかになる。もっとも高く評価したモデルへの配点理由も公表される。軽い気持ちで配点することなど許されない。アワードとしての権威は、そこでも保たれるのである。
実は、ノミネートモデルにも厳しい基準がある。前年の11月1日から当年の10月31日までに国内で発表または発売された乗用車であることを前提に、継続的に、年間500台以上の販売が見込まれることが条件だ。
選考委員に、十分に試乗する機会が与えられていることも条件である。つまり、超少数の限定車は対象になれない。選考する側も、乗らずには評価できない。というように、日本カー・オブ・ザ・イヤーはもっとも権威のあるアワードなのである。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。