中古車価格高騰のカラクリ
R33型日産スカイラインGT-Rの人気が高騰している。1995年に誕生したそれは、R32型からR34型までの「第二世代GT-R」と呼ばれ、カーマニアの間で安定的な人気を得てきた。中でもR33型の人気が、いま、うなぎ上りだそうだ。中古車価格は高騰している。
そこにはカラクリがある。実はそれにはアメリカの輸入事情が深く関係しているのだ。アメリカには独特の輸入障壁がある。新車として販売実績のない車両を中古車として輸入する際の条件は厳しい。厳格な排ガス規制をクリアしなければならない。安全基準を満たしているかの審査を受けなければならない。適合しているかどうかの詳細な書類を提出し、試験場での検査を受ける必要がある。それは、実質的には困難であり、中古車輸入の障壁になっているのだ。
さらに言えば、右ハンドル車の輸入も、一部の例外を除いて禁止されている。つまり、日本の右ハンドル専用の中古車は、太平洋を渡ることが許されないのである。
「25年ルール」
ただし特例がある。製造から25年を経過した中古車に限って、それぞれの厳しい基準が免除される。クラシックカー扱いとなり、排ガス検査や安全基準などの認証から解放されるのだ。右ハンドルの輸入も解禁になる。これがいわば「25年ルール」と呼ばれるものだ。
日本のスポーツカーがターゲットに
そもそもアメリカでは日本のスポーツカー人気は凄まじい。特に、アメリカに新車で輸入されてこなかったモデルは走り派の中で注目されている。当時、バブル経済に後押しされて開発されたモデルは魅力的な性能を誇っていた。ホンダNSXしかり。あるいはマツダ・ロードスターであり、トヨタ・スープラはいまでも若者のハートを掴んで離さない。安定的な人気がある。R33型スカイラインGT-Rは玉不足に陥っている。
つまり、オリエンタルなスポーツカーを待ち焦がれているユーザーが、製造から25年経過するのを待ち焦がれ、彼らのターゲットになっているのが、2020年の今年から遡ること25年前の1995年に製造されたR33型スカイラインGT-Rだというわけだ。
4年前にはR32型が高騰
実はその先代のR32型スカイラインGT-Rも、25年ルールが適用された4年前に高騰した。日本の程度良好な中古車がかき集められ、海を渡った。その余波で、日本の中古車価格は高騰した。その再来がいまR33スカイラインGT-Rに起きているのである。
すでに数年前から25年ルールを見越した投機目的のユーザーにより高騰が始まっている。なかなか手の届かない価格になってしまった。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。