ハイビームでの走行が推奨されて久しい。警察が、夜間の視認性を高めるためには、常にハイビームで走行すべしと告知したのが2018年のこと。場合によっては、ロービーム走行が道路交通法で罰せられることとなった。
だが、それを額面通りに受け取るドライバーは少なかった。現実的には対向車や歩行者への幻惑の問題がある。自分だけが見えていれば良いわけではないと世の中は反発した。むしろ杓子定規に正論をかさず役所の無知を曝け出すことにもなった。
ただ、一部の高級車で「アダプティブハイビーム」が普及し始めたことで光明も見出せる。ハイビームで走行中に先行車や対向車をカメラが捉えると、そのエリアだけライトをローに切り替える。遮光することで幻惑を防止するのである。このシステム搭載車両では85%のドライバーがハイビーム走行になった。だが一方で、非搭載車のハイビーム率は20%にとどまるという。
世界初の技術
たしかに遠くまで光を照らすハイビームが、暗がりを減らす効果があるから安全には違いない。だが実際には、幻惑になる迷惑が重なる。いちいちハイビームとロービームを切り替えるのには無理があったことになる。
その流れを受けて、レクサスがさらに高精度のシステムを開発した。それが「ブレードスキャン式アダプティブハイビーム」。世界初の技術である。
対象物の際まで切り取り可能
これまでの一般的な自動でハイローを切り替えるアレイ式アダプティブハイビームは、約20個のLEDライトの点灯と消灯を繰り返す。だが、遮光エリアが大胆に広いという欠点を抱えている。対象物の際まで遮光するのには無理があったのだ。だがレクサスが開発した「ブレードスキャン式アダプティブハイビーム」は特殊な技術により、正確に対象物の際まで切り取ることができるのである。
そのメカニズムを言葉で説明するのは無理があるが、つまりは、0.000005秒という速さで消灯と灯火を可能にするLEDの光を、高速で回転するブレードに反射させ投射するというもの。光は左から右に高速で移動する。超高速で照射することで、人の目には残像効果を狙った。人間の目には、普通に照らしているとしかみえないのだ。
このシステムであれば、より細かく遮光エリアを切り取ることができる。それを仮にLEDで実現させると、400個ものLEDを組み込まなければならなず、現実的ではない。それをブレードスキャン式が解決してみせたのである。
対象物だけ正確に遮光
実際に夜間走行してみても、確かに残像効果によってそれがブレードスキャン式アダプティブハイビームだとは思えない。だが、対象物の際まで正確に照らしており、先行車と並行して走る自転車や、対向車の脇から横断しようとしている人まで認識できる。対象物だけを正確に遮光していることが分かるのだ。
交通事故率は夜間で高まる。だから警察が推奨するように、ハイビーム走行が基本だとするのも理解できる。だが、冒頭の理由でそれは現実的ではない。だがレクサスの「ブレードスキャン式アダプティブハイビーム」がそれを解決してくれるように感じた。そんな目立たないところにも高度な技術が注がれていることに驚きを隠せない。このシステムを搭載するレクサスRX450の夜間の事故率を検証してみたい。おそらく…。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。