クルマ三昧

ハリアーが賛否ある極細リアランプに拘ったワケ 雅やかな意匠に込めた先進性

木下隆之

 RAV4と対照的な都会派SUV

 新型ハリアーの話題騒然である。6月にプロトタイプの試乗を終えており、完成度の高さは確認済みだ。だがそれは公開ができないという理由でクローズドサーキットでのドライブだった。今回は晴れて公道をドライブすることが許されたのである。

 コンセプトは「都会的SUV」である。「Graceful Life」というキャッチフレーズを展開している。30歳代のビジネスエリートや50歳代のミドルエイジがターゲットだという。それだけに、洗練された印象が強い。同じプラットフォームを使い、同様のパワートレーンを搭載するRAV4がクロスカントリー色を強め、道無き道を突き進むスタイルにベクトルを定めたのとは対象的に、油臭さや泥まみれから決別した潔さが特徴だ。

 そんなハリアーで特に意識させられるのはそのデザインである。様々な角度から検証してみても、デザイン的な思索の数々が透けて見えるのだ。

 フロントのデザイン処理はハリアーの伝統的なものだ。エンジンを冷却するためのグリルは金属質な網ではなく、まるでEVを想像させる樹脂製の印象に近い。サイドに至る面構成は穏やかで艶やかだ。最近目につくガンダム的なゴツゴツ感は皆無であり、上品な面構成がリアエンドまで導かれるのが特徴だ。

 「雅」を強く意識

 車内に意識を転じると、個性的な造形が目に飛び込んでくる。もっとも特徴的なのは、センターコンソールであろう。乗馬の鞍をイメージしていることは明らかだ。素材は本革風であり、本来なら角があるはずのコンソールボックスをラウンドさせて包み込む。印象を崩さないように、電子パーキングブレーキなどのスイッチ類は別の場所に移されている。デザインテイストへのこだわりは並々ならぬものがある。

 スターターボタンは、コンソールの中に組み込まれている。デザイン的な違和感があるものの、唐突にそこに組み込んだのには、実は奥深い狙いがあった。ドライバーの所作を考えての位置決めなのだ。

 ドライバーが運転席に座る。ポジションをアジャストして、スターターボタンに手をかける。エンジンが始動するやいなやセレクターレバーを操作するまでの左手の導線が美しい。優雅な旋律を奏でる指揮者がふるタクトのように、優しく流れるのだ。開発責任者曰くテーマは「雅」だそうだ。

 デザイン担当による興味深い回答

 ハリアーは造形的なデザイン性を求めただけでなく、乗員の所作や意識にすら、日本の魅力である「雅」を意識したというのだから恐れ入る。

 ちなみに、リアエンドの処理も特徴的だ。リアのコンビネーションランプは徹底的に水平基調である。右から左へとフラットにランプが繋がっているのだ。ウインカーやバックランプをバンパーに組み込むなどしてまで薄く細いテールランプに拘ったことには驚かされた。

 実はこのウインカーとバックランプを独立させたことが侃々諤々、好き嫌いを呼んだ。否定的な意見も少なくないのだ。それまでして薄く細くに拘った理由を、デザイン担当に聞くと興味深い回答が得られた。

「薄く細くするのは、先進性を強調するためです」

「流行ですか?」

「確かにトレンドかもしれませんね」

 薄く細く水平基調にするには、高照度のLEDを埋め込む必要がある。技術的にも高度である。それが先進性を感じさせる理由なのかもしれない。たしかに最近、薄く細い水平基調のコンビネーションランプが多い。最新SUVのほとんどが薄く細く…のような気がする。となるとしばらく、薄く細く…のトレンドは続くのだろう。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。